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次世代にツケを残すな

3月3日、経済同友会の岡本(日本生命会長)財政・税制改革委員長は麻生(副総理)財務相に消費増税を骨子とした財政再建提言を行いました。新聞紙上では、①消費税率を2018年度から毎年1%ずつ上げて、最終的には17%にする。②社会保障費は毎年5000億円削減(2014年度で国庫負担が31.1兆円あり、毎年1兆円規模で増加しています)。具体策として、75歳以上の医療費負担を現行の1割から現役所得者並みの3割に上げる、受診時の100円定額負担、高所得者への公的年金等控除の縮小等、③財政健全化法の制定、複数年度予算の導入、独立財政機関の設置等とまとめられています。 年明け1月21日に発行されたこの提言の中身を見てみましょう。標題には「財政再建待ったなし~次世代にツケを残すな~」とあります。そしてこの提言は①ツケを将来世代に回すことなく、法的拘束力のある仕組みをつくる、②財政再建に向けての国民理解の促進、③放漫財政と改革先送りでは破滅的な未来を迎える、④社会保障を「中福祉低負担」から「中福祉中負担」へという4つのポイントを掲げています。 一般に国民の理解という意味で一番浸透しているのは、財務省が先頭...
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日本は教育後進国?

OECDが発行した「Education at a Glance 2012」の大学進学率の国際比較によると、OECD加盟34か国の平均が62%。それに対して日本は51%と平均以下になっています。上位は96%のオーストラリアを筆頭にアイスランドが93%。アメリカは74%、韓国71%、イギリスが63%。日本より下位の国を見てみると、イタリア49%、スイス44%、ドイツ42%等です。 日本の大学進学率が相対的にそんなに低いのか?と直感的に感じて、色々と調べてみました。そもそもこの統計の定義は何か。OECDの大学進学率は、各学年(留年生を除く)を年齢別に集計し、その数を各年令の人口総数で割り、それぞれの割合を合計した数値を進学率と定義しています。ここに大きく影響する要素は留学生と社会人学生です。分母はいわゆるその国の現役大学生年齢の対象者になりますが、分子は外国から勉強しに来た留学生や、職を一旦辞めて勉学を志す社会人などが入ってきますので、理屈としては100%以上にもなり得る数値です。上位国と比較して日本は、留学生にとって魅力的なカリキュラムを提供できているのか、社会人が生涯学習に取り組む下地が...
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高倉健さんの愛読書

2012年9月10日NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀 高倉健SP」で紹介された健さんの愛読書をやっと読むことができた。それは健さんが常に持ち歩き、随所に赤線を引っ張り、ボロボロになるまで何度も読み返したという「男としての人生――山本周五郎のヒーローたち」(木村久邇典著、グラフ社)という本である。当時アマゾンで調べたら書籍は絶版、中古品は7万円もしていた。そんなに人気があるなら再版されるだろうと高を括っていたが、今日までその動きはない。今やアマゾンにさえ出品はない。「男としての人生」を改題・新装復刊した「山本周五郎が描いた男たち――さまざまな男の心情 15の物語」という本もあるが、こちらも絶版。ヤフオクで5万円程の値段で出品されている。いずれにせよ再版されないのは不思議でならないが、それを出版社に問い合わせるほどの情熱まではなかった。図書館に予約し1年4か月待って漸く手元に届いた「男たちの人生」であった。私は待ちに待ったその本をあっという間に読了したものの、正直感動するというところまでは至らなかった。 健さんはこの本のどこにそんなに惹かれたのか。内容は、朝日新聞社時代に周五郎の担当...
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価格下落率1位ナフサ、そして原油

ナフサは2014年取引相場でドルベースで一番の下落商品となりました。年間で51.1%下げて487ドル/トン(120円/$換算で4万円強/kl)になったと12月27日付け日本経済新聞が報じています。ナフサの原料は原油で、この原油の価格下落(48.4%)が直接的に影響しています。ナフサとは元来ギリシャ語やラテン語で原油を意味する言葉から来ていますが、今では石油精製品のひとつとして定義づけられています。原油を加熱炉で350度まで熱し、蒸留装置によって沸点の低い方から、LPガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などのさまざまな石油製品に生まれ変わるわけです。さらにナフサは分解装置等で重さによって軽い方から、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの石油化学製品になっていきます。 ナフサの価格は基本的には原油価格に連動し、その都度都度の為替レートによって換算されます。原油価格は需給によって形成されるとは言うものの、大きくは政治情勢に左右されると言っていいでしょう。70年代半ばまで6000円/klだったナフサの価格は、第四次中東戦争を引き金に発生した第一次オイルショック...
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価格高騰率1位のコーヒー豆から見える世界

2014年年間で最も取引価格が上がった商品はコーヒー豆である。12月26日付け日本経済新聞によるとサントス産No.2はキロ当たり605円と49.4%高騰したと報道されました。2000年からの価格推移を見てみると2001~2年を底に2011年まで一気に6倍にまで跳ね上がり、その後2014年初頭までは3分の1近くまで値を下げ、2014年また2倍に高騰しています。 コーヒー豆は通常、豊作と不作を1年ごとに繰り返すそうです。というのは豊作の翌年コーヒーの木の体力が弱まり、収穫量が減ってしまうからです。2013年は前年が豊作だったことから不作が予測されていましたが、実際には想定より豊作となってしまい価格が下落しました。そうすると生産者の多くが収穫して安値で売るよりは、剪定や植え替えなど木の手入れを優先して収穫を落としたことと天候不順が重なり2014年は逆に価格が高騰してしまったというのが専門家筋の解説です。 ご承知のようにコーヒー豆の生産国はブラジルが世界の3分の1を占めて首位、以下ベトナム、コロンビア、インドネシアと続きます。コロンビアのコーヒー豆は高品質で人気が高いですが、山地の斜面で栽培し...
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スイスと日本

スイスと日本は共通点が多いと言われます。資源が少なく石油を輸入に頼っている点、狭い国土で山が多い、工業製品を輸出して外貨を稼ぐ加工貿易。最近は円安に振れていますが、かつては円もスイスフランも強い通貨の代名詞でしたから、共に輸出価格競争力を奪われる中でグローバル競争を生き抜いてきたという点でも共通項があると言えると思います。 自然景観に恵まれた両国ですが、観光立国という視点で比較してみると、日本は2013年の統計で外国人観光者数が1000万人を超え、ランキングとしてスイスを追い抜いています。スイスの観光客はドイツを筆頭に隣国からが多いのですが、多分物価高もあって観光客は減ってきているようですが、最近は中国など新興国からの観光客を呼び寄せようと努力しています。しかしながら、人口を超える800万人もの観光客が訪れるという意味では日本と比べてもまだまだ先輩格の立派な観光大国と言えるでしょう。ちなみに訪日外国人御三家は韓国・中国・台湾で全体の半数以上を占めますから、日本の「おもてなし」や「Cool Manga Animation」に代表される素晴らしさをもっとアピールしていけば、まだまだ今後の成...
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ロボットと人類の未来

ソフトバンクグループの決算説明会で孫さんが今後の成長戦略について語りました。イソップ童話の「金の卵を産むガチョウ」になぞらえて自社の成長を投資家に支えてもらえるようにわかりやすく説明しています。ある農夫は自分の飼っていたガチョウが毎日金の卵を産むようになって、それを毎日売って換金し、お金持ちになりました。さらに強欲になってしまったその農夫はガチョウの腹の中には沢山の金の卵があるにちがいないと思い、腹を切り裂いてしまいました。しかし腹の中には金の卵がないばかりか、肝心のガチョウを殺してしまうことになり、全てを失ってしまったという寓話です。ソフトバンクグループはEコマースの成長を予見し、アリババのような小さな会社に投資をし、今年NY株式上場を果たした結果、時価総額29兆円という世界でも10指に入る大企業にアリババは成長しました。これからはインドの成長を見越して同じEコマースのsnapdeal.comや配車プラットフォームのOLA(ANI Technologies)等に総額900億円の投資を決定しています。そして十数年後にはアリババのような投資回収ができるであろうソフトバンクを通信会社という...
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哲学のある歯科医から学ぶこと

今年に入って歯を一本失いました。近所の歯科医に何軒か行きましたが、話や治療に納得できずに、結局高校時代の同窓生の歯科医を頼って都心の大学病院まで出掛けました。気心が知れているので、残された人生時間を考え不安に思うことを十分納得できるまで話が出来て良かったと思っています。結果として自ら抜歯を選択しましたが、これからの毎日のデンタルケアについて自分なりのスタイルが確立できたかなと思っています。そんなこともあって、たまたまテレビの番組欄で見たプロフェッショナル仕事の流儀という番組の「『ぶれない志、革命の歯科医療』歯科医・熊谷崇氏」を視聴してみました。 熊谷氏は、自身の診療所に通う子供の8割が20歳になっても虫歯が一本もない、70~80歳の高齢の患者さんも永久歯が数本しか欠落していない等、世界屈指の実績を上げています。その根底にある氏の哲学は患者に自分の口の中の状態を良く知ってもらって、自分の歯を守りたいという意識を強く持ってもらい、虫歯や歯周病にならないような予防を徹底するというものです。初診の患者にはすぐには治療に取り掛からず、口の中の写真を10枚以上撮影し、唾液検査を行い、歯科衛生士が丁...
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遺伝子検査

しばらく前から「遺伝子検査キット」なるものがネットでも売られています。お値段はたったの29,800円なので、家族家系内に遺伝因子の影響が強い疾病をお持ちの方はやってみたいという衝動に駆られて当然のことであろうと思います。ヒトのゲノムの全塩基配列は約10年かけて解読作業が行われ、2003年に完了宣言がされました。それは1953年のDNAの二重らせん構造の発見からちょうど50年後のことでした。 手近な遺伝子検査キットをググってみると、「日本人の2/3近くが生活習慣病で亡くなっています。大事な家族のため、自分自身のためにも病気のリスク、体質を知って、食事・運動などのライフスタイルを見直すことで、今からあなたにあった予防を実践しましょう」とあります。検査項目は脳梗塞、心筋梗塞、2型糖尿病、胆石、尿路結石症、腰痛、痛風、不眠症、円形脱毛症、花粉症、緑内障、アトピー性皮膚炎、貧血傾向、十二指腸潰瘍、アルコール、ニコチン依存症、過食症、長寿・寿命など全70項目となっています。最近では遺伝子検査によるダイエット指導や肌老化対策など美容に特化して顧客誘引しているところもあります。 先般、東京医科歯科大学...
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同一性と変化の矛盾

植民地時代において侵略国に勝手に線引きされた国境によって、民族対立による内戦は世界中のどこかで止むことなく続いています。宗教あるいは民族を基にした同一性の反映でもありますが、歴史を紐解くとその同一性や継続性の根拠は薄弱であることが少なくありません。企業においてもDNAの話は時折話題になり、凋落している企業には「~らしくない」「~らしからぬ」といった修飾語で語られることがあります。一方、企業トップは「変わらないのが最大のリスク」と号令をかけて、変革を促します。よく「変えてはいけないものは維持継承し、変えるべきは大胆に変える」といった指針が出たりしますが、果たして何を変えずに、何を変えるかが具体的に語られないと従業員は戸惑いますね。 ギリシャ神話で「テセウスの舟」というお話があり、ギリシャ時代から議論され続けているテーマのひとつです。ある漁師が木の舟を漕いで毎日魚を捕りに行く。来る日も来る日も魚を捕りに行くので、木の舟は傷んでくる。腐るところも出てくる。岩にぶつけて破損してしまうこともある。その都度、漁師は新しい木で修繕をする。漁師は歳を取り、もう漁には出られなくなる日が来る。そしてその息...