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教育の行く末

私は声を荒げることはめったにない人間だが、過去に役所の窓口、銀行の窓口でその行為に出たことがある。病院の医者の前でも声を荒げたくなったことはあるが、それは抑えた。その代わりと言ってはなんだが、これまで低かった血圧が年のせいもあってか急激に上がった。 これらに共通項があるとすれば、それは杓子定規で融通が利かないということである。それは取りも直さず社会通念とずれている世界にその住人たちはいるということでもあろう。全てを法律や規範、ルールに縛られて状況に応じた臨機応変な対応ができない人たちの集団である。世の中の総てをルール化することはできない。ルールや法律は常に後付けで作られる運命にあり、最近はとみに社会の変革が猛スピードで進んでいるのに加えてコンプライアンスなるものが跋扈して臨機応変に対応を試みると責任を問われ炎上する。活力のない世界になるはずである。 日本の法体系は基本的にポジティブ・リストによって作られる傾向があり、やって良いことだけが書いてある。であるから、新しい事柄は新しい法律を作るまで対応できない。役所には「許可願い」を出して受理されないと事を起こせない。ネガティブ・リストは原則...
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2024調達における現代地政学の視界

日本のテレビは相変わらず些末なニュースに終始していますが、世界は大きく変わっています。ロシアによるウクライナ侵攻は停戦の呼びかけにも関わらず丸2年になろうとしています。市民の死者は1万人を超え、世界各地に離散したウクライナ難民は633万人を超えていると伝えられています。一方、ガザ地区におけるハマスとイスラエルの戦闘は3か月目を迎え、報道では死者は2万人を超えているとのこと。そもそもはハマスが仕掛けた戦闘ではあるものの、死者の4分の3はガザ地区に住む女性と子供という悲惨なことで、イスラエルは世界的に非難を浴びています。この二つの戦闘の教訓はもはや国連は機能していないという看過できない重大な事実です。振り返れば、世界中を混乱の渦に巻き込んだ新型コロナのパンデミックもWHOの無策(無力)により、終息までに丸3年を要しました。先進国と新興国のワクチン格差が大きな問題として取り上げられていましたが、蓋を開けてみれば、人口百万人あたりの死者数は英米伊がトップ3で、上位9位までは欧州・北米・南米が占めています。データ精度の問題も問われてはいますが、アフリカの死亡率は先進国に比べて低いのです。高齢率と...
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解の見当たらないパレスチナ問題

2023年もあとひと月となった。あとひと月で清水寺貫主による今年の漢字が発表される。昨年の漢字は「戦」であった。2年連続で「戦」とはならないだろうが、2022年2月24日ロシアのウクライナ侵攻から始まった戦闘は終わる気配がない中、今年10月7日パレスチ自治区であるガザ地区のイスラム組織ハマスによってイスラエルへの奇襲攻撃が始まった。ロシアとウクライナの歴史は中世にまで遡るが、パレスチナにおけるユダヤ人とアラブ人の歴史は紀元前1230~1300年頃と言われる「出エジプト」まで遡ることができよう。しかし、その争いの歴史は第2次世界大戦後の1948年5月14日のイスラエル建国(日本は1952年に承認)から始まったと見るのが、現実的であろう。なぜなら、それまでのパレスチナ社会は様々な宗教が共存し、宗教は違えど隣人とのコミュニティは大きな摩擦なく存在していたからである(映像が残っている)。そのパレスチナ社会が崩壊し、多くのパレスチナ人が難民となったことがパレスチナ問題の発端である。 パレスチナとはそもそも西アジアの地理的地域を指し、通常はイスラエル、ヨルダンの西部の一部、およびパレスチナ自治区(...
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老人国家日本の行方

岸田首相の経済対策が袋叩きになっている。物価高対策として所得税と住民税の減税や低所得者向けの給付を謳い、賃上げや国内投資の促進を盛り込んではいるものの、選挙前対策のバラマキと批判されて元気も自信も無くしているように見える。先日の衆議院本会議での所信表明演説で「経済、経済、経済!」と声高に連呼して叫んだ姿は支持率アップを期待してのものではあったろうが、却ってその必死さが的外れ感を浮かび上がらせていたように思う。確かに物価高対策は多くの国民が望んでいることではあるが、一国の首相という立場であれば、他にも安全保障強化や社会保障制度の在り方や国家財政健全化といった中期的課題も着実に対応していかなければならない。3兆4千億円の税収増を国民に還元するというのがそもそも筋がおかしい。ようやく税収増のモーメンタムになったのに、それを国民にお返しするというのは政治の放棄にも感じられる。そもそも税金は個人個人では対応できない国家レベルのインフラ整備に使われるものであるはずで、国民に社会インフラとして還元すべきものである。補助金や給付金を否定するものではないが、税制や手続きが複雑になり役所の負担が増すばかり...
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量子力学をかじってみる

2023年度のノーベル賞が日々発表されています。私が高校時代に最も苦手科目としていた物理に興味を抱くようになったのは量子力学を知るようになった最近のことです。 ですからノーベル賞の中でも物理学賞受賞者や受賞理由については関心を寄せています。 今年の物理学賞は「物質中の電子ダイナミクスの測定を可能にするアト秒パルス光を生成する実験手法の開発」で米独典の3氏が受賞しました。猛スピードで物質中を移動する電子の動きから650アト秒(アト秒は100京分の1秒)の単一の光パルスを取り出すことに成功したとのことで、今後は半導体材料などへの応用が期待されているとのことです。 電子は、宇宙を構成するレプトンに分類される素粒子のひとつであり、量子力学の代表的な研究対象と言えます。高校時代には電子は原子核の周りをぐるぐる回っているマイナスの電荷を持つ物質(素粒子)と教わったが、当時は興味もなく反粒子である陽電子が存在することも知る由もありませんでした。 量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った極小の物質やエネルギーの単位のことです。物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っている電子・中性子・陽子といった...
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台湾をめぐる米中と日中

日中のGDPが逆転したのは2010年のことである。日本が西ドイツを抜いてGDP世界第2位になったのは1968年なので、日本は42年間アメリカに次ぐ経済大国として世界にその存在感を誇っていたことになる。1968年時点の日本のGDPは1466億ドル(約51兆円)、当時中国は文化大革命の時代であり、経済数値の信頼性には疑問があるが、凡そ468億元(約1324億円)であったと推定される。日本は中国の385倍の経済規模があり、一人当たりのGDPでは(日本1億1790万人・中国7億5600万人)2474倍の差があった。 米国ニクソン大統領が中華人民共和国(中共)を電撃訪問したのは1972年。国家安全保障問題担当大統領補佐官であったキッシンジャーは前年密かに北京を訪れ、米中関係改善によるソ連の封じ込め交渉に乗り出していた。中共は1949年建国の翌月には国連に中華民国の追放を提起し、その後も何回も同様の提起を企てたが、長らく否決され続けてきた。1971年のアルバニア決議を経て中共は国連の安全保障理事会常任理事国の地位を獲得し、正式に国際舞台の主役としての地位に立つこととなった。アメリカは中華民国の国連...
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人間にとって価値ある能力とは何か

前回ブログの続きのようなものになりますが、本格的AI時代を迎えて、人間とは何か、私とはどういう存在かといった哲学的問いを多くの人が持たざるを得ない段階になってきていると思います。「教養としての生成AI」(清水亮著・幻冬舎新書)は比較的素人にも分かり易く書いてあり、多くの知見を得ることができました。 原始の狩猟時代において、人間にとって価値ある能力は、「目がいい(視力)」「足が速い(走力)」「獲物を仕留められる(腕力・持久力・敏捷性)」といったことであったでしょう。性差による肉体差がある男女間では自然に役割分担がなされ、男は狩りを、女は子育てを中心に日常生活が営まれました。いわゆる食糧調達のできる強い男を女が求めていた時代で、村落内でも英雄として一目置かれた存在であったことが想像されます。 その原始時代において求められた能力競争の名残は今でもオリンピック種目や各種スポーツ、諸々の世界選手権などによって継承されています。車や新幹線や飛行機といった移動手段が進化を遂げても、オリンピック100m走決勝は花形競技として毎回世界の注目を集めています。格闘技もアマ競技からプロに至るまで幅広くファンの...
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修養と教養

18世紀から19世紀にかけてイギリスを始めとする欧州諸国で起こった産業革命によって、農業中心の社会から機械化された工業社会への移行が進みました。労働市場においても、機械化と分業化が進み、生産効率が大幅に向上しました。これにより、多くの労働者は単純作業に特化した分業労働が求められるようになりました。 産業革命初期の工場では、労働条件は非常に劣悪で、長時間労働、低賃金、労働環境の悪さなどが問題となりましたが、一方で、産業革命により、工場の管理職や技術者、運送業者、鉄道労働者など新たな職種や産業も生まれました。また、多くの第二次産業においては、産業の発展に伴う需要の増大により大量生産が進み、一定のスキルや知識を持つ均質な労働力が必要とされるようになりました。 そのようなニーズは教育にも影響を与え、基礎的な読み書きや計算などのスキルを習得できる公立学校や普通学校などの基礎教育の普及が進みました。労働者の子供たちにも教育の機会が与えられ、均質な労働力の形成が促進されました。 また、一部の職種では、より高度なスキルや専門知識が求められました。このため、職業教育や専門学校が設立され、労働者が必要な技...
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日本国憲法精読

戦後日本政治の本流は1955年の自由党と日本民主党が、憲法改正と再軍備に反対し非武装中立を是とした日本社会党の台頭を危惧して、保守合同したことに始まる。 以来、自由民主党(自民党)は党の政綱に「独立体制の整備」:『平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える。』を掲げ日本政治の主流を歩んできた。しかし、結党78年たって未だに自主憲法の制定に至っていない。岸田首相は「自衛隊を憲法に明記することは極めて重要」と改憲に意欲を見せているが、国民投票までの道のりですら様々な困難が待ち受けていることは間違いない。 改めて先入観を捨てて、憲法全文を読んでみると、改正すべき点があるのは明らかであるが、どこをどう改正するかについては百家争鳴となるに違いない。精読後の一国民として所感を述べてみたい。 前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決...
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避戦

きな臭い時代になったものです。近世の多くの戦争が資源や富の偏在を起因として起きています。近現代ではイデオロギーや政治経済的な角逐が原因となっていることが多いように思います。しかし、振り返ってみれば、太古から人類は戦争を繰り返してきました。考古学的には旧石器時代の1万5千年前の遺跡が今まさに内戦で揺れているスーダンで見つかっています。現代の戦争あるいはテロは複雑な要因を抱えています。しかし、富や土地の収奪などの概念がない太古から人類が戦争をしてきたことを思うと、人類は常に戦争の理由を探している生き物なのかもしれません。 1936年にイギリスのブリタニア・ユースというエリート青年団とナチスのヒトラー・ユーゲントという青年団がお互いの国旗(ユニオンジャックとハーケンクロイツ)を携えて共に行進している映像を見ました。ご承知のようにナチスはこの3年後にポーランドに侵攻し、それに呼応する形でフランスと共にイギリスはドイツに宣戦布告して戦争状態に入ることになりますが、時の英国首相チェンバレンはドイツとの戦争を回避するためにその間ずっと宥和政策を取り続けました。そして、多くの国民は第一次世界大戦で多く...