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旧ソ連バルト三国を訪れて

ポーランドを経由してバルト三国(北からエストニア、ラトビア、リトアニア)を訪問してきた。日本から見れば、バルト三国と称されるように旧ソ連邦の国々と十把一絡げに捉えられがちであるが、小国ながらそれぞれ特徴を持った国々である。 たとえば、エストニアは首都タリンからフェリーで2時間半でフィンランドのヘルシンキに着き、スカンジナビア色の強い国家であり、今や世界有数のデジタル化された電子国家である。5万人の電子居住権を持つ非居住者が登録されており、投資の促進やロシアに対する抑止力を高める(エストニアに好意的な人を世界中に増やす目的)努力をしている。 ラトビアは国民の27%がロシア系住民で、一般にはロシア語が利用されている。ロシア化を防ぐために、10%18万人の非国籍者(ソ連時代から帰化せずに永住してきた移民)はAlian Passportであり、選挙権はない。 リトアニアは15世紀末からのモスクワ大公国の脅威により戦禍にまみれ、ポーランドと共和国を形成することによって自国を守る手段とした歴史を持つ。 ポーランド含めいずれの国でも印象的だったのはウクライナの国旗がそこかしこに掲げられ、国を挙げて反...
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日本神話とギリシャ神話(今回は長文です)

日本神話において重要な役割を担うのはイザナギ・イザナミの夫婦神である。夫婦の営みによってヒルコ(水蛭子)という最初の子が生まれた。ヒルコは3年たっても足が立たなかった。夫婦神はこの子を葦船に入れて流して捨てた。次に淡島(泡のような、島としては未熟児)を生んだが、子供の数に入れなかった。 夫婦神はどうも良い子が生まれないので、天上に上り天つ神に相談した。天つ神が占ったところによると、イザナミから声をかけたのがいけなかったのだ、もう一度やり直せとのこと。今度はイザナギから声をかけた結果、無事に淡路島をはじめ、八つの島を生むことが出来た。 国生みが終わると、夫婦神は沢山の神を生んだ。海(の神)を生み、川(の神)を生み、山(の神)を生んだ。イザナミは最後に火の神であるカグツチを生んだ。その時に火熱で陰部を火傷して臥(ふ)した。イザナギの吐瀉物や汚物からさらに沢山の神が生まれたが、結局イザナミは火傷がもとで死んでしまった。 イザナギは妻の死を悲しんで泣いた。そして妻を死なせた子カグツチの頸を剣で切った。そのカグツチの死体からまたしても神々が生まれた。 イザナギは死んだ妻が忘れられず、黄泉の国まで...
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日本人アスリートの世界進出を喜ぶ

大谷翔平のスーパースターぶりは改めてここに記す必要がないほど、世界中の野球ファンや日本人には知られるに至った。このスーパースターは誰と結婚するのだろうと野次馬根性に火が付いたのは私だけではあるまい。メディアの報道を過熱させることなく伴侶を公開できたのは大谷の人間性と相まっての奇跡の技と言ってもいいのかもしれない。 大谷翔平が花巻東高校1年生時に立てた目標達成表「マンダラート」は有名になり、ビジネス書に「仕事に活かせる3つの教え」等として引用されるほどである。 大谷マンダラートの最終目標は8球団からドラフト1位指名を受けることであった。そのために「コントロール」「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「体づくり」の5項目に加え、「メンタル」「人間性」「運」の3項目を記している。さらにこの8項目の達成のために必要な詳細項目をそれぞれの8項目に記載している。 たとえば、「メンタル」では「仲間を思いやる心」や「頭は冷静に心は熱く」。「人間性」では「愛される人間」「感謝」「礼儀」「継続力」「信頼される人間」など。「運」に至っては「ゴミ拾い」「道具を大切に使う」「プラス思考」「応援される人間に...
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和敬清寂(わけいせいじゃく)

和敬清寂とは、茶道の心得を示す標語である。それは、主人と賓客がお互いの心を和らげて謹み敬い、茶室の備品や茶会の雰囲気を清浄にするという意味である。わび茶の完成者として知られる千利休は「和」、「敬」、「清」、「寂」を「四規」として茶の湯の精神を後世に伝えた。 中国では紀元前から愛飲されていたお茶を、遣唐使が日本に持ち帰ったのは平安時代とされる。当時お茶はとても貴重で、天皇や貴族、僧侶だけしか口にすることができなかった。鎌倉時代に臨済宗を伝えた栄西が「お茶は良い薬です」と、時の将軍源実朝に献上したことが記録に残っているが、お茶と武士との関係はこの頃からあったようである。 南北朝時代には飲み比べの「闘茶」が流行し、その延長で宴会や賭け事に拡がったので、禁止令が出されたという記録も残っている。室町時代には(当時は高級であった)風呂上りに熱い茶を飲み、ご馳走を食べて贅沢をするというように上級社会の催事になっていったようである。 千利休は言わずと知れた日本一有名な茶人であるが、天下人豊臣秀吉の側近となってからは政事の表舞台に上っていくことになる。利休という名前は、のちに禁中茶会(1585年)にあた...
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新日本建設に関する詔書(1946.1.1)

ここに新年を迎える。 顧みれば、明治天皇は明治の初め、国是として五箇条の御誓文をお示しになられた。 それによると、 一、幅広く会議を開き、何事も議論をして世論に従い決めなければならない。 一、身分の高い者も低い者も心をひとつにして、積極的に国のあり方を考えていかなければならない。 一、中央政府も地方の領主も、庶民に至るまで、それぞれ志を遂げ、人々が生きていて幸せに感じる事が重要である。 一、古くからの悪しき習慣を打ち破り、人類普遍の正しい道に基づいていかなければならない。 一、知識を世界に求め、大いにこの国の基盤となる力を高めなければならない。 お考えは公明正大であり、付け加えなければならない事柄は何もない。 わたしはここに誓いを新たにして国の運命を開いていきたい。 当然このご趣旨に則り、古くからの悪しき習慣を捨て、民意を自由に広げてもらい、官民を挙げて平和主義に徹し、教養を豊かにして文化を築き、そうして国民生活の向上を図り、新日本を建設しなければならない。 大小の都市の被った戦禍、罹災者の苦しみ、産業の停滞、食糧の不足、失業者増加の趨勢などは実に心を痛める事である。 しかしながら、我...
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教育の行く末

私は声を荒げることはめったにない人間だが、過去に役所の窓口、銀行の窓口でその行為に出たことがある。病院の医者の前でも声を荒げたくなったことはあるが、それは抑えた。その代わりと言ってはなんだが、これまで低かった血圧が年のせいもあってか急激に上がった。 これらに共通項があるとすれば、それは杓子定規で融通が利かないということである。それは取りも直さず社会通念とずれている世界にその住人たちはいるということでもあろう。全てを法律や規範、ルールに縛られて状況に応じた臨機応変な対応ができない人たちの集団である。世の中の総てをルール化することはできない。ルールや法律は常に後付けで作られる運命にあり、最近はとみに社会の変革が猛スピードで進んでいるのに加えてコンプライアンスなるものが跋扈して臨機応変に対応を試みると責任を問われ炎上する。活力のない世界になるはずである。 日本の法体系は基本的にポジティブ・リストによって作られる傾向があり、やって良いことだけが書いてある。であるから、新しい事柄は新しい法律を作るまで対応できない。役所には「許可願い」を出して受理されないと事を起こせない。ネガティブ・リストは原則...
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2024調達における現代地政学の視界

日本のテレビは相変わらず些末なニュースに終始していますが、世界は大きく変わっています。ロシアによるウクライナ侵攻は停戦の呼びかけにも関わらず丸2年になろうとしています。市民の死者は1万人を超え、世界各地に離散したウクライナ難民は633万人を超えていると伝えられています。一方、ガザ地区におけるハマスとイスラエルの戦闘は3か月目を迎え、報道では死者は2万人を超えているとのこと。そもそもはハマスが仕掛けた戦闘ではあるものの、死者の4分の3はガザ地区に住む女性と子供という悲惨なことで、イスラエルは世界的に非難を浴びています。この二つの戦闘の教訓はもはや国連は機能していないという看過できない重大な事実です。振り返れば、世界中を混乱の渦に巻き込んだ新型コロナのパンデミックもWHOの無策(無力)により、終息までに丸3年を要しました。先進国と新興国のワクチン格差が大きな問題として取り上げられていましたが、蓋を開けてみれば、人口百万人あたりの死者数は英米伊がトップ3で、上位9位までは欧州・北米・南米が占めています。データ精度の問題も問われてはいますが、アフリカの死亡率は先進国に比べて低いのです。高齢率と...
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解の見当たらないパレスチナ問題

2023年もあとひと月となった。あとひと月で清水寺貫主による今年の漢字が発表される。昨年の漢字は「戦」であった。2年連続で「戦」とはならないだろうが、2022年2月24日ロシアのウクライナ侵攻から始まった戦闘は終わる気配がない中、今年10月7日パレスチ自治区であるガザ地区のイスラム組織ハマスによってイスラエルへの奇襲攻撃が始まった。ロシアとウクライナの歴史は中世にまで遡るが、パレスチナにおけるユダヤ人とアラブ人の歴史は紀元前1230~1300年頃と言われる「出エジプト」まで遡ることができよう。しかし、その争いの歴史は第2次世界大戦後の1948年5月14日のイスラエル建国(日本は1952年に承認)から始まったと見るのが、現実的であろう。なぜなら、それまでのパレスチナ社会は様々な宗教が共存し、宗教は違えど隣人とのコミュニティは大きな摩擦なく存在していたからである(映像が残っている)。そのパレスチナ社会が崩壊し、多くのパレスチナ人が難民となったことがパレスチナ問題の発端である。 パレスチナとはそもそも西アジアの地理的地域を指し、通常はイスラエル、ヨルダンの西部の一部、およびパレスチナ自治区(...
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老人国家日本の行方

岸田首相の経済対策が袋叩きになっている。物価高対策として所得税と住民税の減税や低所得者向けの給付を謳い、賃上げや国内投資の促進を盛り込んではいるものの、選挙前対策のバラマキと批判されて元気も自信も無くしているように見える。先日の衆議院本会議での所信表明演説で「経済、経済、経済!」と声高に連呼して叫んだ姿は支持率アップを期待してのものではあったろうが、却ってその必死さが的外れ感を浮かび上がらせていたように思う。確かに物価高対策は多くの国民が望んでいることではあるが、一国の首相という立場であれば、他にも安全保障強化や社会保障制度の在り方や国家財政健全化といった中期的課題も着実に対応していかなければならない。3兆4千億円の税収増を国民に還元するというのがそもそも筋がおかしい。ようやく税収増のモーメンタムになったのに、それを国民にお返しするというのは政治の放棄にも感じられる。そもそも税金は個人個人では対応できない国家レベルのインフラ整備に使われるものであるはずで、国民に社会インフラとして還元すべきものである。補助金や給付金を否定するものではないが、税制や手続きが複雑になり役所の負担が増すばかり...
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量子力学をかじってみる

2023年度のノーベル賞が日々発表されています。私が高校時代に最も苦手科目としていた物理に興味を抱くようになったのは量子力学を知るようになった最近のことです。 ですからノーベル賞の中でも物理学賞受賞者や受賞理由については関心を寄せています。 今年の物理学賞は「物質中の電子ダイナミクスの測定を可能にするアト秒パルス光を生成する実験手法の開発」で米独典の3氏が受賞しました。猛スピードで物質中を移動する電子の動きから650アト秒(アト秒は100京分の1秒)の単一の光パルスを取り出すことに成功したとのことで、今後は半導体材料などへの応用が期待されているとのことです。 電子は、宇宙を構成するレプトンに分類される素粒子のひとつであり、量子力学の代表的な研究対象と言えます。高校時代には電子は原子核の周りをぐるぐる回っているマイナスの電荷を持つ物質(素粒子)と教わったが、当時は興味もなく反粒子である陽電子が存在することも知る由もありませんでした。 量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った極小の物質やエネルギーの単位のことです。物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っている電子・中性子・陽子といった...