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如来・菩薩・明王・天部

先日、親父の七回忌を終えた。特段、仏教信者ではないし、神道に帰依しているというわけでもない。「普通」の日本人のように無宗教の空間に暮らしている。俗に葬式仏教だとか、正月は神社にお参りするだとか、年末になれば何となくクリスマスを祝う。そういった意味での「普通」の日本人である。海外に行くと、無宗教というのは、一般には信じられない存在で、「特に宗教はないけど」などというとエイリアンのように思われたものだ。それゆえ、キリスト教だとか、ユダヤ教だとか、昨今ではイスラム教がかなり台頭しているので、表面的には勉強もし、スンニ派とシーア派の違いや、なぜに反目しあうのか、偶像破壊をする連中はどういったドグマに侵されているのか等、国際政治の一端を知る上で教養としての知識は身に着けたつもりではいる。 しかし、考えてみれば仏教も色々な宗派があり、何が同じで、何が違うのか、あまりわかっていない。歴史上、宗派間で争ったということも聞いていない。実家の菩提寺は浄土宗であるが、時折、浄土宗だったか、浄土真宗だったか、度忘れする程度の宗教観と実生活においての距離感がある。年をそれなりに取り、神社仏閣に何となくノスタルジ...
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驕れる者は久しからず

先月のことであるが、女子プロゴルフ界でゴルフ場のバスタオル提供を巡ってツアー通算5勝の笠りつ子プロが副支配人に向かって暴言を吐いた事件が報道された。複数の関係者によると、笠は多くの選手がストレッチなどに利用するクラブハウス内の浴室にバスタオルがなかったことに立腹。一部報道では、コース関係者に「頭が固い。死ね」などの言葉を浴びせたとされる。 同大会では用意していたバスタオルを持ち帰る選手が多く、今年から提供をやめていたという。さらに一部の選手関係者がマナーを守らないため、荷物置き場や長いすも撤去していたとされる。ことは笠のみに限ったことではなく、プロゴルフ界の「常識」としてまかり通っていたことなのではないだろうか。 事件が表面化して日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長は謝罪したが、選手名は明かしていなかった。笠は自身の公式サイトに、直筆の声明文を掲載し自ら謝罪。当面の間ツアー出場を自粛。LPGAは笠を処分する方向で調査している。男子ツアーより人気が高く、TV放映も多かったが、人気選手の理想像と現実の姿の違いにショックを受けたファンも多かったことだろう。 ゴルフジャーナリストの...
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コンプライアンスとは~関電金品受領問題~

関西電力(以下関電)の会長や社長など経営幹部6人が、関電の原子力発電所がある福井県高浜町の森山元助役から、合わせておよそ1億8000万円の資金を一時、受け取り、税務当局からの指摘を受けて、所得税の修正申告をしていたと報道されたのは2019年9月27日のことである。その日の岩根社長による記者会見で、過去7年間に20人が3億2000万円の金品を受け取っていたことが明らかになった。そして、「社内調査の結果、私を含めた役員・社員の一部が、良識の範囲を超える金品については受け取りを拒んだり返却を申し出たものの、強く拒絶されるなど返却困難な状況があったことから、返却の機会をうかがいながら一時的に各個人の管理下で保管していた。現在までに、儀礼の範囲内のものなどを除いてすでに返却を行っていることを確認した」と説明した。続けて「また発注等、当社の業務に関する問題がないことを確認しているが、コンプライアンス上疑義を持たれかねないものと考えており、本件を厳粛に受け止めている。今後二度とこのようなことが起こらないよう、コンプライアンスの徹底に努めていく」と述べた。翌日の日経新聞には「関電、法令順守の欠如露呈」...
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一人殺せば殺人者、100万人殺せば英雄になる

チャップリンの映画「殺人狂時代」(1947年)で、チャップリン演じる殺人犯が死刑判決のシーンで叫んだ有名なセリフである。原文は One murder makes a villain, millions a hero. Numbers sanctify. 〆には「数が殺人を神聖化する」と続く。この映画は第二次世界大戦の勝利に酔っていたアメリカを強烈に皮肉ったものだ。当時アメリカを覆っていた恐怖のレッドパージ(赤狩り)によってチャップリンは追われる身となり、事実上の国外追放によりスイスに移住することとなる。遡ること7年前ナチスが台頭する戦中に製作された「独裁者」(1940年)では、恐怖によって世界を征服しようと企むヒトラーを容赦なく「滑稽な愚人」として強烈な風刺をもって描いた。激怒したヒトラーが、ナチス全軍にチャップリンの殺害を命令したという。 殺し合いによる大量死者というと多くの人の頭には2つの世界大戦が過るものと思う。第二次世界大戦における死者数は5000万〜8000万人とされ(民間人3800万〜5500万人、軍人2200万〜2500万人という統計数字がある)、第一次世界大戦のそれは3...
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日本の立ち位置

前講は主に大航海時代から植民地時代を経て、日本がどのような歩みをしてきたかを論じました。今回は今現在を視点に置いて日本を取り巻く環境と日本自身について論じてみたいと思います。 株価が連日大幅安となっていますが、これはご案内の通り米中貿易摩擦に端を発する米中経済戦争が世界経済の大きな不安要素となって市場を揺るがしている結果です。賢明な皆さんは、この状況が決して経済のみに限定した争いでないことはご存知のことでしょう。将来に向けての覇権争いであり、現状況は米中冷戦の始まりに過ぎないと言って差し支えないでしょう。この収まりには数十年単位のスパンで見ていく必要があります(米ソ冷戦は44年間続きました)。5G、サイバー空間、宇宙空間、AI、デジタル情報など新しい分野での覇権争いが次々とその戦場になっていきます。 さて、日本周辺はどうでしょうか。日韓の関係悪化が連日取り沙汰されています。文在寅政権が変わるまでは日韓関係が好転していくことはないでしょう。文政権の最重要課題は何よりも南北朝鮮統一ですから、理屈が通らないことでも国民感情に訴え、煽るやり方で押し切るつもりなのでしょうが、民衆がそれに最後まで...
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世界史の大河と日本

日本で初めて開催されたG20が無事に閉幕した。メディア的には米中の貿易協議の行方や、多分にパフォーマンス的な板門店で行われた米朝会談が注目を集めたが、「癖の強い」各国のリーダー達を受け止め、安倍首相がホスト国のリーダーとして主導権を発揮しえたことは、日本の存在感をさらに高めつつ、成功裏に終えたこととして十分評価に値するものと思う。 G20は2008年のリーマン・ショック時の世界金融危機の深刻化を受けて、20か国・地域首脳会合(G20 Summit)として開催されたのがその始まりである。それまでのG7ではこの難局に立ち向かえないとして、世界のGDPの90%・貿易総額の80%を占め、加盟国の総人口は世界の3分の2を占める国々にまで参加国を広げ、金融サミットとして始まったものである。今回のG20では招待国・国際機関を含めると37ヶ国の要人が一堂に会し、世界経済、貿易・投資、エネルギー、デジタルデータ、環境対策、雇用等の幅広い議論を行う公式の場となった。 しかし、参加国が増えれば増えるほど、議論百出で全会一致という形に持っていくことはなかなかできるものではない。G20 における首脳宣言は、全会...
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調達購買10の原理原則

今回は調達購買の原理原則について論じてみたい。製造業と一口に言っても様々な業種があり、購入品の種類や特性も数多くある。非製造業においても外部から全く何も購入しないという企業は存在しない。何らかの商品やサービスを提供するにあたって、外部への依存無しに価値ある完成品を創り上げることは不可能と思われる。あらゆる調達購買部門に共通する原理原則として次に掲げる10項目を参考にしていただきたい。 ①調達倫理の確立:法令遵守はもちろんのこと、法律に違反しないから何をやってもいいということにはならない。取引に際して、嘘を言ってはならない。騙してはならない。ビジネスにおける会社対会社間、個人対個人間において約束をしたことを守るのが基本である。やむを得ない事情により、約束が守れなかった場合には誠実にその弁済を図るべきである。国際取引において意図して騙そうとする組織や個人がいるかもしれないが、約束を守ろうとしたあなたが悪いわけではない。しかし、相手を見極めることが出来ずに安易に騙されたとあってプロとしては失格である。 ②取引の公正・公明・公平:会社を代表して取引に当たるあなたは個人の嗜好で与えられた権限を濫...
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利子の歴史

利子とは、貸借した金銭などに対して、ある一定利率で支払われる対価のことである。金融機関などから借りたお金に対しては当たり前のように利子が付く。高度成長の時代には銀行に預けたお金に対しても当たり前のように利息が付いてきたものだが、約20年続いている日銀の超低金利政策導入以来、利息がほとんど付かないのが当たり前になってしまった。平成という時代は平和であったが、低成長の時代でもあった。 日本の利子の歴史を紐解くと、律令体制の時代にコメなど租税として納められないほど困窮した百姓には、神への捧げものとして保管されていた米を貸し与えるということが為されていた。その場合、返す時には借りた米より多い米を神様に返礼するということが行われていたそうで、日本では利子という概念が何らかの形で認識されていたようだ。 ヨーロッパに目を転じると、古代ギリシャの海上交易でも利子を伴う貸付は広く行われていたそうであるが、アリストテレスは「貨幣が貨幣を生むことは自然に反している」(「政治学」1巻10章)と反論している。 宗教的には旧約聖書でも新約聖書でも、利得を期待せずに無償で貸すべきであるという教えが中世キリスト教にお...
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やめることの大切さ

コンサルティングに携わっていると、事業計画やKPI設定なのでよく訊かれる質問がある。「これで漏れはないでしょうか?」「何か抜けていませんか?」、あるいは最近のバズワード(特定の期間や分野で人気となった言葉のことであるが、もっともらしいけれど実際には定義や意味があいまいな用語)に対して、「どう対応したらいいか?」「他社はどうやっていますか?」というような質問を度々受ける。 調達購買部門は社内では守りに入っているケースが多く、社内の様々な「突っ込み」に対して防御する姿勢が強い傾向がある。何か言われても、「このように対応しています」とか、数字を示し「順調に推移しています」とか、説明という名の言い訳を常に準備しておかないと気が休まらないところがある。調達購買の仕事は上手くいっている時は目立たないが、ひとたび問題が発生するとやたら目立つ類の業務で、IT部門と似たようなことろがある。しかし、あれもやります、これもやっています、KPIはこのように50項目管理しています、っていうのが本当の調達事業計画であり、KPI管理であろうか? 歴史のある大企業の調達購買部門ほど、そういった傾向が強いように感じられ...
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アメリカ本土を爆撃した史上唯一の男

倉田耕一著「アメリカ本土を爆撃した男」を読んだ。奮戦記と思って読んだのだが、全く当てが外れた。読む進むうちに涙が滲んできてしかたがなかった。 その男、藤田信雄は帝国海軍きっての腕利きパイロットで、潜水艦に搭載されるたった全長8.5mの零式小型水上偵察機を操ってオレゴン州のブルッキングスという町の山中に1942年9月9日焼夷弾を打ち込んだ。 それに先立つこと5か月前の4月18日、日本は初めてアメリカによって本土空襲に見舞われた。米空母から発艦したドーリットル中佐が指揮する16機のB25は、東京、川崎、横須賀、名古屋、四日市、神戸を爆撃し、国際法で禁じられている「民間人に対する攻撃」(校庭掃射など)を行った。日本国民の怒りが沸騰するのは当然であった。 それを受けて、4月21日に軍令部に呼び出された藤田は、上記のオレゴン州森林への爆撃命令を受ける。サンディエゴの海軍基地でもなく、ロス・アンジェルスの飛行機工場でもなく、なぜ人もいない森林なのかと藤田は訝った。 作戦はこうである。アメリカの西海岸はレッドウッドなどの森林が多く、そこに焼夷弾を打ち込んで火災を発生させれば、折からの強風により大火災...