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米中対立の狭間で揺れる日本の行方

ほぼ3年前に「日本の立ち位置」というタイトルで埋没していく日本の姿をブログで書きました。 今回はちょっと異なる観点から米中対立の狭間で日本はどう生き抜いていけばいいのか論じてみたいと思います。 アメリカのペロシ下院議長が8月3日台湾を訪問し、蔡英文総統と会談して台湾との連帯を強調しました。ペロシ議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、アメリカの現職の下院議長が台湾を訪問するのは1997年のギングリッチ氏以来25年ぶりだそうですから、異例の訪台と言っていいでしょう。1997年当時のギングリッチ氏(共和党)は、アメリカが1979年に台湾と断交して以来、アメリカ下院議長として初めて台湾を訪れ、李登輝総統などと会談しました。ギングリッチ氏は「中国が武力によって台湾を統一しようとすれば、アメリカはあらゆる手段で台湾を防衛する」などと述べ、中国側は「内政干渉だ」として強く反発しています。25年前の再現ですから、25年間台湾をめぐる米中の対立の基本構造は変わっていないということです。今回もペロシ氏の訪台を阻止しようと、中国から事前の口撃や牽制がありましたが、それを跳ね返す形でペロ...
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出処進退

宇宙飛行士の野口聡一さん(57)が6月1日付けで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を退職した。野口さんは1996年に宇宙飛行士候補者に選ばれ、これまで3回宇宙に滞在。2020~21年に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した際の往復では、米国の新型民間宇宙船「クルードラゴン」に日本人として初めて搭乗した。ISS滞在時間は計335日17時間56分で日本人最長を記録した。退職の記者会見において野口さんは次世代に道を譲り、今後は研究機関などを中心に活動すると抱負を語った。 野口さんは立花隆氏の著書「宇宙からの帰還」に感化されて宇宙飛行士を目指したそうで、今後は宇宙体験や船外活動が人間の内面にどのような変化をもたらすかといった当事者本人が研究主体かつ研究対象となる「当事者研究」に本格的に参画し、宇宙飛行士としての新たな社会還元(障害者就労、アスリートの燃え尽き症候群対策など他分野への応用も視野)を模索しているとのことである。 たまたま目にしたHarvard Business Review2013年3月号にてThe Best-Performing CEOs in the World(世界のCEO...
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医療費の無駄

横浜から川崎に引っ越して1年になる。引っ越しして困るのは病院探しである。齢還暦を超えると体のあちこちにガタがきて、医者のご厄介になることは必定である。近所の良い病院を一から探すのは苦労するが、最近はネットで口コミも書いてあるので、参考にはなるが、見ると聞くとは大違いということも少なくない。年老いてご厄介になるのは成人病の内科クリニック、歯医者、眼医者などが代表的であろう。 引っ越しとコロナ禍を言い訳にして、3年ほど高脂血症と高尿酸症の薬をさぼっていた。毎日の薬の服用に飽きてきたこともある。「薬のやめどき」等という本も読んで勝手にやめてみたりもした。遡ること30年前に初めてのアメリカ赴任(フロリダ)から帰国して健康診断を受けたところ、赴任中の食べ放題・飲み放題がたたり、4つの指摘を受けた。それ以降、真面目・不真面目な薬の服用を繰り返し、生活習慣病と付き合ってきた。最新数値の高さにビビり、薬服用の再開を決めたところである。やはり痛風にはなりたくない。まあ、これは本人の不徳の致すところで致し方ない。話はこれからである。 病院というところはカルテを自分の所有物と思っているようで、一切コピーなど...
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ポリコレからの言葉狩り

最近は何でも言葉を短縮してしまうので、「えっ?」と聞き返したくなることが多い。耳が遠くなってきた証かも知れない。そういった言葉の一つに「ポリコレ」がある。「ポリコレ」とはPolitical Correctnessの略で「パリコレ」ではない。さらに当たり前のように「PC」とか言われてしまうとパソコンビジネスに身を置いていた私としては話の方向性を見失ってしまう。Wikipediaによると、ポリコレは「社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策または対策などを表す言葉の総称であり、人種・信条・性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指す。政治的妥当性とも言われる」とある。 「差別」をするべきではないという論理には大方の人が賛同するであろう。人種差別、男女差別、障碍者差別、貧困差別、職業差別など、現実社会に目を向ければ「差別」なるものは枚挙にいとまがないほどである。しかしながら、単なる「区別」が「差別」として扱われるようになると、マイナー(少数)がメジャー(多数)を食い殺す結果になりかねない。「区別」と「差別」は全く違う概念では...
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「ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論」(デヴィッド・グレーバー著)

アメリカの人類学者デヴィッド・R・グレーバー氏による著書「ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論」は個人的に言えば、ローレンス・J・ピーターの「ピーターの法則」(レイモンド・ハルとの共著)以来の社会学領域における名著である。残念ながらグレーバー氏は2020年9月享年59歳で亡くなってしまったが、遺作「The Dawn of Everything: A New History of Humanity」が昨年出版されている。Bullshitはアメリカにおいてはほとんど放送禁止用語扱いの言葉ではあるが、その言葉を敢えて用いることによって現代の多くの仕事がクソどうでもいい仕事になっていることを強烈に印象付けている。 18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命によって多くの肉体労働が機械化され、人間は多くの苦役から解放された。家庭内においても家事が洗濯機、掃除機、ミシン、炊飯器、電子レンジ等の家電製品によって軽減された。肉体労働に従事していた男たちは新しい職場を求め、うまく生活の基盤を作った人もいれば、転職に成功せずに暮らし向きを悪化させた人もいた。多くの時間を家事に奪われていた...
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ウクライナ侵攻~プーチンの蛮行~

政治学を志した者の端くれとして、今般のロシアのウクライナ侵攻に関して何等かの思いを書き記さなければならないと心底思う。言うまでもなく、これは現代の国際社会において許されざるべき蛮行である。「この軍事行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反です。」と林外務大臣談話が外務省HPに掲載されている。 国連の無力さはこれまでも取り沙汰されてきたが、最大の問題は安全保障理事会常任理事国が第二次世界大戦の戦勝国のみ(厳密にいえば、戦勝国は中華民国であって、中華人民共和国ではない。中華人民共和国は1971年に21回目の国連加盟申請の投票で加盟が認められたが、中華人民共和国は国連に宛てた1972年9月29日付の書簡で、中華民国が批准した多国間条約を中華人民共和国が遵守する義務はないと主張している。それゆえ、中華民国から安全保障常任理事国の権利を引き継いだのではなく、横取りしたというのが実態である)で構成されていて、各国に拒否権が与えられていることである。つまり常任理事国の蛮行を国連の場では制御できないということが今般のロシ...
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ギリシャ神話

ギリシャ神話に興味を惹かれたのは、「岸壁に鎖で繋がれたアンドロメダ姫を海獣から救う英雄ペルセウス」を主題とした絵画がいくつもあることを知ったのがきっかけだった。ペルセウスは翼のあるサンダルを履き宙を飛び、あのブランド名にも使われているエルメス(ゼウスの子)から授かった金剛の鎌ハルペー(刀剣)を右手に、左手には怪物メドゥーサの首を掲げ海獣に立ち向かう。メドゥーサは首を打ち取られたとはいえ、眼光の魔力は消えず、海獣はその魔力によって石と化し、ペルセウスはアンドロメダを救い出す。ペルセウスはのちにアンドロメダと結婚するが、アンドロメダには婚約者がいたので、その顛末は単純ではない。 アンドロメダがなぜ岸壁に繋がれていたかというと、その母カシオペアが自らの美貌は神にも勝ると豪語したことから、怒った神々から生贄にされたもがアンドロメダだった(なぜカシオペアではないのか? 白雪姫の話はこの話をモチーフにしてる?などギリシャ神話は突っ込みどころ満載で楽しい)。 ペルセウスはアルゴス王の娘ダナエ―と最高神ゼウス(様々なものに変身して人界に現れ、あちこちに子供をつくる何でもありの浮気者)との間に生まれた子...
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調達2022 迷える調達購買部員へ

変異株のオミクロン株は幸いなことに日本においては感染拡大が迅速な水際対策によって今のところ抑えられてきましたが、欧米での感染者数は目を疑うほど急拡大を続けています。丸二年続いている新型コロナの影響で、親族や友人に会えない時期が続いていましたので、この年末年始は人の移動が確実に増えると思います。これによって感染拡大が進むと思われますが、毒性が弱まっているという報告もあるので、徐々に日常生活が戻ってくるのではないかと願っています。 この2年間、ビジネスにおいても大変な制約条件の中で、調達購買部員の皆さんはご苦労されてきたものと思います。原材料の値上がりから始まり、半導体などの品不足や納期の長期化、コンテナの偏在による物流の停滞など悩ましい状態が来年もしばらくは続くでしょう。年末年始くらいは頭を空っぽにしてゆっくり休んで英気を養ってください。最後の砦はご自身の心身の健康にあるのですから。 私の仕事は対面が基本ですが、一昨年昨年とオンラインやアーカイブでの仕事も徐々に増えてきました。しかしながら、早く対面に戻って皆さんのお顔の表情を確認しながらコンサルやセミナーを行える平常モードに切り替えが進...
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労働の未来

巷では労働力不足が叫ばれている一方で、AIやロボティックス技術の急速な進展により人々の仕事が奪われると言われている。国内における所得格差が多くの国で指摘される一方で、政情不安な国から安定と仕事を求めて先進国へ難民や移民が押し寄せ、先進国では治安が乱され職を奪われると権利を主張する人々が政権を揺さぶる。マクロで見ればこれまでの技術の進展により明らかにそれまでの人々の労苦は代替され楽になってきたわけだが、ミクロで見ると自分の仕事を機械化やIT化により奪われたとみる向きもあるのは当然であろう。産業革命時において労働者による機械焼き討ちはあったし、銀行などの金融業界でも人員削減が進められ将来的には大量解雇が計画されている。技術の進展が早ければ早いほど、労働者はその変化のスピードに対応できないし、今後の技術変革そのものの高度化はさらに対応し生き残れる人々の門戸を狭めていくであろう。私自身は既存の大方の労働観と言われた「生活の糧とする労働」を軸に無事リタイアするところまで来ることができたが、これから人生100年時代と言われる将来のある若い人たちにとって労働とはどういうものは明らかに思考の変革を求め...
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旧約聖書を紐解く

ユダヤ教やキリスト教徒ではないので、ホテルにある聖書を開いたことはないし、当然詳しいわけではない。キリスト教に目覚めたわけでもないが、旧約聖書をお話として触れてみると、源流において他宗教との相似点が多々あるし、現代の人間関係においても大いに示唆に富むものと思い無謀なチャレンジをしてみようと思い立った。 旧約聖書はモーセ五書と言われる律法の書、9つの歴史書、全16巻の預言書、全6巻の詩書により構成されている。今回はそのさわりとして「創世記」の序盤を抄訳してみたい。モーセ五書の「創世記」の冒頭は第1章「天地創造」から始まり、天地創造の7日間が今日の1週間に繋がっている。 第1章「天地創造」 第1日目 光と闇を分け昼と夜を創った 第2日目 空を創り空の下と上に水を分け空を天とした 第3日目 水を集め陸と海を創った 第4日目 太陽と月を創り天の星を散りばめた 第5日目 空と海の生き物を創った 第6日目 地上に獣、家畜、人間を創り人間をすべての生き物の支配者とした 第7日目 すべてを創り終え休息した 『神様にならって日曜日は休みましょう。働きすぎはよくないです。これからしんどい仕事はAIやロボッ...