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死刑制度を考える

2018年7月6日、麻原彰晃を含め、オウム真理教幹部7人の死刑が執行された。同月26日には残りの6人も執行され、一連の事件で死刑が確定した計13人全員の死刑が執行された。平成時代の事件は平成時代で終息させるという行政の考え方が反映されたかどうかわからないし、これにより被害者の心が安寧になったかといえば、そういったことでもないだろう。しかし、一連の事件で29人が死亡(殺人26名、逮捕監禁致死1名、殺人未遂2名)し、負傷者が6000人を超える日本犯罪史において最悪の凶悪事件はひとつの節目を迎えたことになる。 これらの死刑執行に対して、テレビ各局はワイドショー宜しく執行の度に逐次報道し、新聞各社は死刑廃止が世界の潮流と称して「文化人」のコメントに大きく紙面を割いた。死刑制度に対しては賛否両論あるのは当然であろう。人が人を裁き命を奪うというのは許されることなのか。それは戦場で人を殺すのは国際法によって免罪されていることと同次元の話ではないものの、正当防衛は許されて、正当防衛できなかった被害者はしょうがないと割り切ることは、普通の人間の感覚を有していればできることではないだろう。 人権活動団体の...
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星野君の二るい打

二ヶ月ほど前になるが、一時色々な形で有名になった前川喜平氏の講演を聴く機会があった。醜聞も気にはなったが、教育行政に長年携わってきた前川氏が、今、そしてこれまでの日本の教育をどのように総括するのか若干の興味をもって聴いた。ちなみに前川氏の祖父は前川製作所の創業者、前川喜作氏で、喜作氏が創設した和敬塾(目白台にある男子学生寮)からは村上春樹氏や隅修三氏(東京海上ホールディングス代表取締社長)など錚々たる文化人、経済人、政治家を輩出している。ちなみに前川喜平氏の妹と中曽根康弘氏の長男弘文氏とは婚姻関係にあり、前川喜平氏と中曽根康弘氏は親戚関係にあたる。教育基本法を改正したいと教育審議会を立ち上げた中曽根元総理と、国家介入から教育の自主性を守らなければならないとする前川喜平氏の二人が、政治家と官僚という立場で、少なくとも前川氏の視点に立てば、対立含みの忖度という位置にあったのは、皮肉な話であったと言えよう。 「星野君の二るい打」という話は、この前川喜平氏の講演の中で初めて聞いた。道徳の教科化が始まる平成30年の教科書に載っていて、前川氏曰く、この話はまさに「個」よりも「全体」を重んじる滅私奉...
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明治維新150年、五か条の御誓文を読み返す

今年2018年は、明治維新1868年から数えて150年の節目の年である。明治維新をやり遂げた薩長土肥の遺勲や幕末志士の思いなど、その評価にはいまだ毀誉褒貶があろう。当時、清の二の舞になってはいかんと、欧米列強へ対抗せんとした尊王攘夷論は、最終的には尊王開国という形に終結していき、大政奉還に至った。勝海舟と西郷隆盛の江戸城無血開城は有名なくだりであり、これにより多くの優秀な人材が犬死することなく以降の時代を牽引することとなるが、その後1年半に渡る戊辰戦争、そして日本最後の内戦である西南戦争を経て、西郷自害に至るまで10年余り多くの血が流れたことは歴史の知るところである。 今世紀に入って2010年にチュニジアで始まったジャスミン革命から波及した、アラブ世界における民主化を求める「アラブの春」は、前例のない大規模反政府デモに発展した。2012年にはエジプトやリビアで強権長期政権が打倒されたが、その後の国内対立とその衝突により混乱を招き、シリアに至っては泥沼の内戦状態がいまだに続いている。それら間隙を縫ってISが建国を宣言し、いっとき大いに勢力を拡大したことは記憶に新しい。 旧体制崩壊後に秩序...
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今どき、まだ文系・理系ですか?

大学受験にあたって、受験生は未だに文系・理系の選択を強いられているのであろうか? 教育現場では便宜上、生徒を文系・理系に分けて、志望校に合格するための必須科目を集中的に勉強するのは手段の最適化という観点からわからないでもないが、卒業して随分経っているにも拘らず、それを引きずって(固執して)いる人を見ると哀れになる。昔はInnovationが50年に一度程度、人生も50歳+αであったので、学生時代に勉強したことで食いっぱぐれることはなかったであろう。しかし、いまやInnovationが十数年に一度、人生100年時代を前提とすれば、生涯学習をもって時代に適応できなくては食いっぱぐれる時代になっていることを認識しなければならない。 昭和2年生まれの私の親父は既に鬼籍に入ったが、現役時代には「私もエンジニアの端くれですから」と半ば誇らしげに人に話していた姿は今でも強く印象に残っている。ちなみに親父は新幹線の車両整備運行に携わるエンジニアであった。 日本の高度経済成長を支えたのは、紛れもなく科学技術の発展によるところが多いであろう。70年代後半には自動車、電化製品、カメラなどは日本製品がNO.1...
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疑似科学

疑似科学とは、いかにも科学的であるように見えて、実は科学的根拠がなく、実証も反証もできない事柄の事を言う。例えば、日本では今でも根強い人気がある血液型と性格の関係は代表的事例と言えるでしょう。昔から伝わる占星術や風水などもその例と言っていいでしょう。科学的思考は重要ですが、かと言って現時点で検証されたとされる科学が万能とも言い切れません。科学技術の進展が発見と修正の歴史であることもまた事実ですから。実際、過去科学的に証明されてきたことが、実は間違っていたという例を探してみました。たとえば、以前は植物性脂肪から作られるマーガリンが、動物性脂肪から作られるバターよりも健康に良いと長らく信じられてきましたが、2000年代に入ってマーガリンに使われているトランス脂肪酸が、LDLコレステロールを増加させ心血管疾患のリスクを高めると指摘され始め、国によっては法規制の対象にまでなっています。一方、宇宙科学では、冥王星は他の8つの惑星と性質が違っていると考えられるようになり、2006年の国際天文学連合の総会によって、「準惑星」というカテゴリに分類され、惑星ではなくなりました。体力増進に関しては、星飛雄...
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ヴェノナ文書

現代日本の有様がどうしてこうなっていったのかを紐解いていくと、第二次世界大戦を通り抜けて日中戦争がなぜ起きたのか、さらに1919年ロシア革命、それを主導したコミンテルンの誕生に遡る。 中国、韓国がなぜあれほど反日なのか、日本国内にひたすら倒閣だけを旗印に活動する議員やメディアがどうして存在しうるのか、戦後の日本はなぜにかくも骨抜きな国家になってしまったのか、それらはコミンテルン誕生、つまりマルクス・レーニン主義を、自らの権力構造確立のためにスターリンがレーニン死後に徹底的に浸透させていった時代(資本論に代表されるマルクス主義の意図的曲解)に突き当たる。 昨今また覇権主義を強行する中国やロシアの台頭によって「新冷戦」と呼ぶ向きもあるが、ソ連崩壊による東西冷戦終結は実は表面的なことであったことに気づかされる。資本主義陣営が、その勝利に酔って油断している間も、冷戦は水面下でずっと続いていたし、実は「米ソ冷戦」と言われる以前から広義の外交手段の一つとして存在していたのである。 このところずっと報道されているアメリカ大統領選挙へのロシア介入疑惑や、対峙する同士間だけとは限らない国家間のスパイ活動...
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格差拡大と民主主義

富の偏在性を見る指標にジニ係数がある。ローレンツ曲線をもとに、1936年にイタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案されたものである。それによると日本は1981年0.349から一貫して上昇し、2014年0.570まで上がっている。ジニ係数とは、1人が全ての所得を独占した場合は1。完全平等社会であれば0となる。一般にジニ係数の社会騒乱多発の警戒ラインは0.4とされており、これを理由に日本は格差社会だと喧伝する向きもあるが、それは正しくない。日本は資本主義国家の中でも社会主義的な国家運営をしており、かなりの所得再配分が行われている。再配分所得によるジニ係数は1981年0.314、2014年0.376と前述の0.4を下回っており、自由経済の結果による偏在を政策によって是正してきているのである。OECD加盟国30ヶ国中、日本は貧困率がメキシコ、トルコ、アメリカに次ぐ4番目に高いというデータも持ち出されるが、再配分前の相対貧困率の比較であり、必ずしも生活実態を反映しているものとは言いがたい。ちなみに新興国の貧困率は1日1.25ドル未満という絶対貧困率で表しており、相対貧困率とは全く異質のもので...
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トヨタの強み

かんばん方式などの「トヨタ生産方式(TPS)」を体系化した大野耐一氏や鈴村喜久男氏から直接の薫陶を受けた林南八氏(トヨタ自動車顧問)の話を聞く機会を得た。トヨタ生産方式を語った本は数多あるが、トヨタの強さの神髄は上司が部下を不断の改善に駆り立てる鍛錬道場であると言えるのではないか。 この上司にはいい加減な報告はできないと感じさせること。上司自身も現場確認しているし、自分の頭で考えている、そして部下に質問したり、ヒントを与えたりしている。職場自体がこの鍛錬の場となっていることが最大の強みであると感じた。 以下、私が印象に残った林氏の講演の一部を私自身の感想を含めて箇条書きでご紹介したい。 1)TPSとは、原価低減と人材育成の仕組みに他ならない。自分自身(上司)がチャレンジしていますか? 部下にチャレンジさせていますか? 原価低減を目的として、その過程を人材育成に充てている意識は忘れがち。原価低減目標達成ばかりに目が行きがち。 2)滞留を無くしていくと、課題が出てくる。分岐・段取・不安定な工程・物流において、新たな滞留が発生するので、それを解決していく繰り返し。生産現場はモノの滞留を減らす...
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憲法改正を阻むものは何か

前回に引き続いて日本の安全保障について書きたい。なぜならどのような私的公的活動を行うにしても人は国家の基盤がなければ、何一つ立ち行かない存在だからである。ビジネスも日本の会社ということで大いに信用されうる下地を得ていよう。個人で海外旅行をしますといっても日本国発行のパスポートがあればこそ、世界中ほとんど国を旅することができる。闇市場で日本国パスポートが高値(20~100万円?)で売買される所以である(ICチップの埋め込みによって昨今は取引は困難になってきていると言われる)。 現日本国憲法は1947年5月3日に施行された。今でも5月3日は憲法記念日の祝日である。ゴールデン・ウィークの陰に隠れてしまい、改めて「現行憲法」とは何か、大丈夫なのかと問う人は少数かもしれない。しかし、今年は憲法改正の発議が行われるであろう重要な年である。 教科書で全ての日本国民が習ったであろう、日本国憲法を特徴付ける三大要素とは「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つである。 日本は1945年8月14日にポツダム宣言を受諾してから、1952年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効するまでの7年間弱、...
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ヘルムート・シュミット(西ドイツ第5代首相)

ヘルムート・シュミットは、西ドイツの政治家で、第5代連邦首相(在任:1974年 - 1982年)を務めた人物である。首相退任後の1983年からは『ディー・ツァイト』紙の共同編集者を務める言論人・文化人として政治的発言を続けた。なぜ、新年早々この人物のブログを書こうと思ったかと言えば、当時の西ドイツの置かれた状況が、今の日本のそれに酷似しているからである。 第二次世界大戦敗戦後の西ドイツはアメリカの後押しを受けて、1949年ドイツ連邦共和国としてNATOに加盟するという条件付きで主権を回復した。アメリカと西ドイツはソ連に対抗するという共通の目的のもと、互いに協力していくことが合意され、1950年代には大量のアメリカ軍がヨーロッパに配置されることとなる。 1961年アメリカ民主党のジョン・F・ケネディが第35代アメリカ合衆国大統領に就任すると、アメリカはベトナム戦争にその関心の重心を移していったが、1960年代に入ってもアメリカと西ドイツの関係は良好に推移していた。1968年に第37代アメリカ大統領に就任したリチャード・ニクソンは、泥沼化していったベトナム戦争からの撤退を模索していた。その...