横浜から川崎に引っ越して1年になる。引っ越しして困るのは病院探しである。齢還暦を超えると体のあちこちにガタがきて、医者のご厄介になることは必定である。近所の良い病院を一から探すのは苦労するが、最近はネットで口コミも書いてあるので、参考にはなるが、見ると聞くとは大違いということも少なくない。年老いてご厄介になるのは成人病の内科クリニック、歯医者、眼医者などが代表的であろう。
引っ越しとコロナ禍を言い訳にして、3年ほど高脂血症と高尿酸症の薬をさぼっていた。毎日の薬の服用に飽きてきたこともある。「薬のやめどき」等という本も読んで勝手にやめてみたりもした。遡ること30年前に初めてのアメリカ赴任(フロリダ)から帰国して健康診断を受けたところ、赴任中の食べ放題・飲み放題がたたり、4つの指摘を受けた。それ以降、真面目・不真面目な薬の服用を繰り返し、生活習慣病と付き合ってきた。最新数値の高さにビビり、薬服用の再開を決めたところである。やはり痛風にはなりたくない。まあ、これは本人の不徳の致すところで致し方ない。話はこれからである。
病院というところはカルテを自分の所有物と思っているようで、一切コピーなど取らせない。昨今はセカンド・オピニオンの活用ということで一般の人も自衛手段を講じている人もいるが、多くの医者は上目線あるいは慇懃無礼なままでカルテ開示には非協力的である。カルテのコピーを頼んだら、弁護士から開示申請書面を出してほしいとか、コピー一枚5000円だとか、悪徳業者としかいいようのない医者も世の中にはいるようだ。「患者の権利法をつくる会」では患者の権利擁護を中心に据えた「医療基本法」の法制化を目指している。カルテの内容は個人情報保護法による個人に帰属するものであって、病院のものではない。患者ご本人が死亡した際に、その死因に疑問があれば、当然これらの法律に基づいてカルテを請求することができる。
ことがこれほど重大ではない場合には、初診の歯科医に行けば、まずは全体のレントゲン写真を撮られる。内科医も血液検査をまず行う。眼科も視力検査はいうに及ばず、眼底検査、網膜検査と特に頼みもしないのにやってくれる。ただ、目がかゆいのですといっただけなのに。これらは全てダブり検査の代表であろう。そして医療費増加に貢献する賜物である。
医療情報が個人に帰属するのであれば、それらカルテの情報は個人が管理すべきで、それを初診の医者に開示するかどうかは個人が判断して、医者に提供するようにすべきである。これが本来の姿と思うが、読者の皆さんは如何お考えであろう。
厚生労働省によると令和元年の国民医療費は44兆円を超えて毎年増加している。防衛費を他の先進国同様にGDP比2%にしなければならないという主張に対して、財務省は財源がないというが、今の倍にしたところで10兆円。国債で賄えという人たちに言っておきたいのは、1200兆円の日銀保有国債の利払いは金利が1%上がれば、金利負担は12兆円増えるのである(追記:正確にいうと国債は半分を日銀が保有しており、金利負担は日銀にとっての利子収入になる。それは最終的には国庫に納まるので、実質の負担増は約半分)。抜本的な予算見直しが必要であるが、多くの利権に絡めとられ、現状の微々たるプラス・マイナスで予算は毎年作られる。そもそも不景気だからと言って毎年予算が増えていくのはもうやめなければならない。日銀券を刷れば大丈夫などと言ってられはしない。
国会議員にも財務省にも言いたいが、既に日本は人口減に入っており、大胆な少子化対策や移民政策を施さない限り、人口は減り続ける。つまり予算も議員も警察も病院も消防署も大学もあらゆる国家基盤組織は将来の人口減日本に対して見直しをせざるを得ない状況なのである。
医療費に話を戻そう。医療に関わるムダは目を覆わんばかりである。効果のない薬の氾濫により、製薬メーカーへ金が流れる構図。不十分な臨床試験で1000万円超の医療費が承認される再生医療の世界。生活習慣病の基準値はどんどん下げられて健康な人間を不健康と定義して病院通い、薬漬けに追いやる。腎臓病患者は透析治療まで放置され、公的助成制度により個人負担は少ないが、透析治療の国家負担は月50万円。血圧も130以上は要治療などとTVコマーシャルで喧伝して不安を煽る。体の大きさ関係なく、男性は87㎝以上の腹囲はメタボ判定。最近まで国保に入っていたが、年間の保険料はざっと100万円である。私がこれから10年間一般の保険会社に年間100万円支払うと死亡保険金は7000万円。もう何がまともかわからなくなりそうだが、国民皆保険だから、真面目な国民としては健康保険料を支払わないというわけにはいかない。アメリカで国民皆保険が定着しないのはさもありなん。自己責任が当たり前の個人主義の国なのである。日本では新たに国民皆歯科検診が浮上してきた。表向きは歯周病などの早期治療により医療費削減が期待できるとか。がん検診も定着してきているようだが、日本のがん患者死者数は増加の一途である。
米IT大手のGAFAMはヘルスケアのデジタル化を見据えて技術を蓄積してきており、健康管理や遠隔診療などでデータや顧客の囲い込みを進めている。どこでも診断や治療ができる将来を目指す競争は既に始まっている。具体的には、生体情報を集めるバイタルセンシングによる日常の患者活動データと取り込み、遠隔医療や電子カルテなどを含む医療ICTによる将来の健康状態予測、AIによる解析技術などバイオICTにより治療計画を見直したりといった応用が進められている。彼我のデジタル庁の進化は如何ほどであろうか。
思い返せば、新型コロナのワクチンも2回打てばもう大丈夫と菅総理も言っていたはずなのに、変異を繰り返すウイルスを前に「重症化は防げる」と言い方が変わり、3回目の接種が進まないとTVコマーシャルで宣伝費を投入する。ファイザーは1本1万円、モデルナは4000円。それに会場設営費がかかり、打つ人の日当は10万円。私は私なりにmRNAワクチンの文献を読んで、当初から懐疑的であった。だからコロナ・ワクチンは一回も接種していない。でも何も問題なく寝込むことはない。ワクチン説得派は40年もカリコー・カタリン博士が研究していたワクチンだから大丈夫と言い、一方では40年も研究していたのに、これまで承認されなかったのは何故?と小首をかしげる人もいる。つまりワクチンの効果はどれほどだったのかといった政策の効果検証が行われずに、ワクチン打て打てということに多くの国民は疑問を感じ、3回目接種率が6割に届かないことにつながっている。外食産業を狙い撃ちした形の外出規制にしても、効果のほどは今もって検証されない。あえて検証を避けているようにしか見えない。こうした日本をみていると、多分に「社会主義的なんだなあ、日本は」と思う。決して否定的に社会主義的と言っているわけではないが、個々人が情報リテラシーを磨いて、個々人の責任において判断していってほしい。医者に掛かっていれば大丈夫、薬飲んでいれば大丈夫などと「先生」を信用しすぎてはいけない。コロナ禍はそれを人々に投げかけたのではないだろうか?
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