今日は毎年この時期に早稲田大学井深大記念ホールで行われる早稲田会議記念講演会に参加しました。2010年から始まったこの会議は正式にはCEOラウンドテーブルと呼ばれ、2日間に渡って経済人や学者が非公式で議論を行う場として催されています。私は一般公開となっている記念講演会に第二回目から出席していて、過去ファーストリテイリングの柳井正氏、コマツの坂根正弘氏が登壇し、今回は前中国駐在全権特命大使の丹羽宇一郎氏が登壇しました。
「日本のこれから」~企業は人なり~と題された講演では最近の日中韓の関係、中国が低成長期に入ったとする見解、日本の人口減少に触れ過去の延長線上に日本の繁栄はない、国を挙げて教育投資を行い、個人個人はもっと自立をしていかなければならないといった論旨を展開されました。
私の印象に残ったのは冒頭、中韓のトップが繰り返し口にしたという「中国の夢」(習近平主席)、「韓国の幸福」(朴槿惠大統領)というそれぞれの国の目標目的です。
国を率いるトップが何のために政(まつりごと)を行うかは国民として大いに気になることであり、それが論点として選挙が活性化し、健全な形で民意が反映されていくのが理想の姿のはずであろうと思います。前述の2国が民意を反映した民主主義か否かといった体制の議論は別にしても、「理想」を語らずして進歩はないと私は思います。
丹羽氏によれば中国の予算のうち最も大きなものは教育費(30兆円相当)、次に社会保障・就職関連、そして農林水産、公共投資と続き、これら合計で国家予算の半分近くにまで達するとの事。すっかり軍事費に大層費やしているのかと思っていた私の目を開かせていただきました。ちなみに国防予算は教育費の1/3程度だそうです。少なくとも中国上層部が教育分野こそがこれからの「中国の夢」の実現に最も必要だと認識して手を打っているということは伝わってきます。
一方、日本の教育予算はOECD加盟国でGDP比最低といった数字も丹羽氏は紹介していましたので、私なりに調べてみました。行政の縦割りだったり、地方予算で賄っている部分があったり、家計負担で塾などが流行っていたりと一概に日本の教育費が低いは言えない点もあるようです。共産圏とは比較しにくい話ですが、少なくとも日本には統一された教育国家戦略はないと言わざるをえないでしょう。これは今の日本にどんな国になろうとしているかといった目標目的意識が希薄だからなのではないでしょうか。
安倍総理の「三本の矢」の最も大事な成長戦略には、Life ScienceとEnergy革命が主要候補と丹羽氏は語っておられましたが、こういった成長分野に教育投資を含めて着実にやっていかなければならないと私も思います。民とか官とか言っている場合ではないのでしょう。時間は掛かるでしょうが、掛かるからこそ簡単には追いつかれない強みのある産業に育つものと思います。いつまでも日本の高度成長を支えた電機・自動車にばかり依存していてはいけませんね。もちろん各産業でInnovationを起こす努力は否定しませんが、新興国ができるようになっている領域に投資をしていっても経済合理性から言って回収の見込みが立ちません。
講演後の丹羽氏と早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授との対談で出ていた話ですが、「日本人は皆同じことをやりたがる、隣と競争して勝った負けたと一喜一憂」と日本人の同質性・同胞性の現代における脆弱性を指摘していました。第三回の坂根氏も同じことに触れていたのを記憶していますが、氏は「強み弱みは状況によって反転するので、日本の特質を生かしてやっていけばいい」といった論旨を展開されていました。
いずれの議論も私なりに共通性を整理すると、「外に出よ」「自立せよ」「人を気にするな」「個性を磨け、そしてそれを際立たせよ」といった文言になりましょうか。今の私個人に関して言えば「毎日一歩でも1㎜でも前進しているかどうか」を自らに問いかけながら自分の頭で考えて、そして明日に向かっていきたいと思います。
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