科学の発展

前回年明けのブログは激変する調達環境の話を綴りました。今月は「調達科学研」の名にちなんで科学の話をしてみようと思います。これから書く科学の話はほとんど武田邦彦先生の受け売りです。ですが、私なりにひとつひとつ解釈しながら話を進めてみたいと思います。
1.「石と木の時代」:国内外問わず、歴史的な建造物を見るのは好きです。それらを眺めながら先人の想いやその時代を空想することは楽しいものです。日本の古い建造物はほとんど木で出来ています。豊かな自然に恵まれた日本では、森林から木を切り出し、神社や寺院を建てました。仏像や美術品も職人が木を細工して作っています。木造の家を作る前は竪穴や横穴を掘って暮らしていました。ギリシャやローマの建造物は石で出来ています。ピラミッドも石を切り出して積み重ねて造りました。身近にある材料を工夫して加工していた時代です。
2.「鉄の時代」:鉄は紀元前(ヒッタイト)から製鉄技術(鉄鉱石の還元と過熱鍛造)が発明されましたが、鉄は錆びて土に還ってしまうため、歴史的遺物はほとんど残っていません。鉄が産業のコメと言われるようになったのは、18世紀後半のイギリスから始まる産業革命において中核を担うことになったからです。蒸気機関、鉄道、蒸気船は鉄鉱石を溶解して銑鉄を作り、精錬した多くの部材を必要としました。日本では古来から「たたら吹き」製法で鉄を造っていましたが、幕末以降、欧米の製鉄技術者を招き近代化に大きく舵を切った結果、世界のトップランナーに上り詰め、高度成長期には「鉄は国家なり」を体現するに至ります。
3.「電気の時代」:電気は18世紀ベンジャミン・フランクリン(日本ではベンジャミン伊東が電線音頭を踊っています)が「雷の正体が電気である事」を発見しました。電気は雷という形で目視できるので、古代から雷神(古代ギリシャ最高神ゼウス)が書き残されていますが、一般には目に見えない物質です。静電気も目には見えないので、特に冬場のビリビリは怖いものですね。その電気が電荷の移動によって起こる物理現象として解明されて、19世紀後半からは動力源や照明に利用されるようになり、今やなくてはならない重要インフラになっています。
4.「原子の時代」:電気の物理現象をさらに解明していくと、原子の構造に至ります。原子は正の電荷を帯びた原子核と、負の電荷を帯びた電子から構成されています。原子核はさらに陽子と中性子から成り、ウランやプルトニウムなどの核分裂反応を使用し莫大なエネルギーを放出する核兵器を実用化するに至りました。
5.「トランジスタの時代」:電子回路において、信号を増幅またはスイッチングすることができる半導体素子が第二次世界大戦後発明されました。それまで使われていた真空管に代わってエレクトロニクスの主役に躍り出ます。トランジスタの集合体である集積回路(IC)は今やあらゆる機器や装置の動作に欠かせない存在になりました。
6.「ゲノム解析」:コンピュータの発達によって、生物の遺伝子情報が高速に解析できるようになりました。ゲノムを構成するDNA分子の塩基配列(GATCの並び)データ解析、転写・翻訳によって作られるメッセンジャーRNA(新型コロナワクチンの多くはこの型)やタンパク質などの遺伝子産物の解析、生物種間で塩基配列がどれだけ似ているかなどの比較、さらに大腸菌や出芽酵母などの実験生物で解析された個々の遺伝子に関するデータなどを基にさらなる解析と医学的応用が進められています。
7.「素粒子の時代」:素粒子は物質を構成する最小単位のことですが、極微細であるために長年見つけられずにいました。陽子は1919年に、中性子は1932年に、素粒子のひとつであるクォークは1964年に発見されました。別の素粒子であるニュートリノを世界で初めて検出したのが1987年のカミオカンデです。小柴昌俊先生が2002年にノーベル物理学賞を受賞されています。スーパーカミオカンデでは1998年にニュートリノが質量を持っていることが確認され、2015年には梶田隆章先生が同様に受賞されています。ニュートリノは1秒間に約100兆個が我々の体を通り抜けているそうで、一般人には全く実感がわかない代物です。

これ以上の記述は私には無理な領域にたどり着きました。量子コンピュータが世界を変えるとはよく聞く話なのですが、「素粒子の世界で見られる重ね合わせや量子もつれなどの状態を利用して、従来の電子回路などでは不可能な超並列的な処理を行うことができる」と言われてもちんぷんかんぷんです。そういえば、高校時代の物理は一番の苦手科目だったなあ。素粒子の世界が解明されていくとUFOの謎解きや宇宙戦艦ヤマトのワープの実現性のみならず、魂や虫の知らせなどの精神世界へも踏み込んでいる研究者もいます。量子トランスポーテーション実験は既に成功しています。
武田先生によると、太陽から地球が得ている光エネルギーは1%で、99%は全く活用されていない素粒子だそうです。人間が宇宙で分かっている物質は全体の5%で、95%はダークエネルギーとかダークマターと呼ばれる未知の物質(もしかして反物質?)だそうです。人類の未来は現代人の想像を絶するものですね。人間は目に見えるものしか認知できませんが、今の状態をやたらとクヨクヨする必要はありません。過去の未来予測は外れるか、予測よりも早く実現されてきました。何をやるにも周りに身を委ねて受動的に生きるのではなく、自分のやりたいことを能動的に挑戦していく生き方がやっぱり良さそうです。なぜなら我々は周知を尽くしても知らないことだらけで、それぞれの人生にその時々の正解があると達観せざるを得ないのですから。

コメント

  1. 木村正則 より:

    元ソニーの技術の方からの依頼で陽子をぶつけてそれをモニターする機器の開発を手伝いました。依頼元のURLを添付します。

    不具合回収にKEKまで行った日を思いだしました。
    この時が一番きつかった、迷惑かけたし、何日も眠れず、辛かった。

    社内の技術部の営業課長や技術の担当も仕方ないとケロリとしていてビックり!
    入社して1年もたっていなかったけど営業の課長を会議室に呼び出して物凄くちゃんと怒った。(その後課長は、退職してしまったけど)いなくなってマジで良かった。
    電子が発見されても当初は、何に使えるかわからなかったらしい。今後素粒子が役に立つかも。
    https://www.kek.jp/ja/

    • fujita より:

      KEKって大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構の略なんですね。初めて知りました。長いし、ローマ字だし、名前はちょっとダサめ。HPを見たら、「小林・益川理論50周年記念講演会~なぜ、人類は宇宙に存在しえるのか?~対称性のほころびの不思議さ」2月18日(土)一橋講堂とありました。「物質と反物質は出会うとエネルギーとなり消滅してしまう」って書いてあるけど、理解できるかなあ? 対象が高校生以上ってなっているので、申し込んでみようかな。