漢字を廃止せよ(昭和20年11月12日付け読売報知新聞)

本日付け日本経済新聞の「熱風の日本史」というコーナーで、アメリカが太平洋戦争後に日本から軍国主義を一掃し、民主主義を根付かせるために「漢字の全廃・ローマ字採用」という動きを掛けたことを紹介しています。その論拠となったのが、日本人は漢字学習に膨大な労力を費やしているため、国際社会で常識的な知識を習得する時間がなく、愚民化されてきたというものです。驚くのはこういった主張に日本人自ら同調している人が少なからずいたことです。改革派の国語学者の金田一京助やフランス文学者の桑原武夫などもその賛同者で、志賀直哉に至っては「一番いい、美しいフランス語を国語にしよう」と、本人はフランス語を解さなかったにもかかわらず、こういった珍論を展開したそうです。

明治維新前後にもそのような動きはあり、前島密が徳川慶喜に仮名書き化を建白したとか、森有礼が英語国語論を唱えたとかしたことも紹介されていました。これらの動きは「多くの日本人が過去の日本に自信を失って、初めから出直しだと思った時に盛んになる」と中国文学者の高島俊男氏は「戦後国語改革の愚かさ」で述べているそうです。

小渕内閣の私的諮問機関『「21世紀日本の構想」懇談会』で英語を日本の第2公用語とする構想がありました。その後具体的な計画が進んだという話は聞いていませんが、最近では文部科学省が小学校の英語必修化を打ち出すなど、英語教育の拡充を図る動きは定着しつつあるようです。楽天やユニクロなど英語を社内公用語にすると宣言をしている企業もありますが、メリット・デメリット賛否両論あるでしょう。しかし、ひとたびグローバルビジネスを志し、世界中の顧客を相手にするには、企業として世界中の優秀な人材を引き付ける必要があります。その意味ではその立場にありながらも何十年も一進一退の感がある多くの日本本社の内なる国際化は避けられるテーマでは決してありません。Wikipediaによると2010年の調査で、インターネット上の主要言語は英語が27.3%でトップ、中国語が次いで22.6%、スペイン語7.8%、日本語5%と続くとあります。日本人の人口比からは日本語大健闘というところですが、情報種を広げる意味でも、文化慣習が違う民族とのCommunicationという意味でも英語をはじめとする外国語を理解することに何らのデメリットはありません。

漢字かローマ字か、日本語か英語かといった二者択一の議論こそが偏狭な精神であり、どちらもやればよいし、能力や志のある方は3つでも4つでもやればいいと思います。欧州人の多くはその歴史的・地理的背景もあって数か国語話せる人が少なくありません。中華系マレー人もマルチリンガルが少なくありません。中国人エリートも昨今は英語能力が高いです。「2つの言葉ができる人はバイリンガル、3つできるのがトライリンガル。では、ひとつの言葉しかしゃべれない人を何と呼ぶでしょうか? 」というなぞなぞがありますが、この答えは「アメリカ人」というジョークです。日本人も似たようなレベルかもしれません。私自身も英語は頑張って読んだり書いたりのレベルですから、深い思考を英語ベースでやることは困難ですし、苦痛です。やはり思考を巡らすのは日本語ですし、漢字を主体にした活字です。一目で意味の分かる表意文字の漢字と表音文字のかなを組み合わせて出来た現代の日本語は誇るべき文化財産だと思います。本の厚さを見ても日本語と英語では随分違います(電子書籍ではあまり優劣はないでしょうか)ね。

TVのクイズ番組では昔は難読漢字を答える回答者がもてはやされましたが、最近は「こんな漢字も知らないの?読めないの?書けないの?」といったおバカを売りにするクイズ番組も少なくありません。「これなら私の方がマシ」と視聴者を安心させ、日本人総白痴(差別用語になったのでしょうか、普通に漢字変換されません)化を企てている人がどこかにいるのでしょうか。

ここに語彙数推定テストなるサイトを紹介します。 NTTコミュニケーション科学基礎研究所が単語親密度を利用して開発したテストです。私の結果は何とか大学生レベルはクリアしましたが、知らない単語が結構ありました。これから勉強しなきゃと素直に思います。日本人としては、理解できない日本語が出てくると不安になってしまいます。皆さんはどうですか?

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