ヒトや動物が外界を感知するための感覚機能は、代表的なものを古くから五感と分類しています。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚がそれですが、犬は人間の100万倍の嗅覚を持つとも言われ、生き物の中でもその能力に大きな差が認められています。犬の聴覚はこれも人間の16倍あると言われ、視覚は色の識別力は低いものの、動体視力は抜群です。一方、味覚は人間の1/6しか無いそうなので、あまりグルメの食事を与えても飼い主が想うほど、犬は有難味を感じていないのかもしれません。味覚を感じるのは味蕾という感覚器ですが、この味蕾の数は歳を取るごとに減少していき、成人の味蕾の数は乳幼児の半分だそうです。つまり乳幼児の方が味に敏感で、子供の頃の好き嫌いの多さは感度が良いということ。大人になって色々なものが食べられるようになるのは味覚の感度低下という側面もあるようです。
さて、標題と話がずれていってしまいましたが、今回は個人的な音楽遍歴を(勝手に)ご披露しようかと思い、筆を取りました。個人的に思うに昔よく聴いた音楽を耳にすると、すぐにその時代に想いを馳せることができて、タイムスリップ気分を味わえます。そういった意味ではこれも多分に個人的かもしれませんが、次に挙げることができるのは嗅覚ではないでしょうか。これも昔が蘇ってくるという点では多くの方からご賛同いただけるのではないかと思います。
小学生高学年の頃だったでしょうか。家にステレオがどど~んと現れ、その姿はレコード盤を置くボックスが真ん中に鎮座して、その上部にはイコライザーなんかを含む色々なツマミがついていました。そのボックスと同じ大きさの木目調スピーカーが両脇を固め、その荘厳さを確かなものにしていたという記憶があります。親父の買ってきた演歌・ムード歌謡系のアルトサックスや映画音楽全集みたいなものを聴きかじったのが音楽コレクションとしての最初です。兄貴の買った(であろう)ビートルズの「Let it be」があって、何度も聴きました。どう聴いても「エルピー、エルピー、エルピー、エルッピ~」としか聞こえなくて、頭のLの音は聞き取れなかったです。聞き取れるようになったのは英語を学んでからだいぶ経ってからのことです。
太田裕美、小椋佳、チューリップ、荒井由実、オフコースなど所謂ニューミュージック系のレコードなど兄妹が買ったと思われるものを、これもどうせ家にあるなら聴こうという感じで聴いていましたが、今でも選んで聴くことがあるのはユーミンや小田和正くらいでしょうか。それ以前にグループサウンズ時代があって、タイガースの「真珠の首飾り」なんかもシングル盤ですが、家にあってよく聴いていたのを思い出します。
中学生になって外国のポップスに興味が移り、「全米ポップス20」、確か、みのもんた(みのみのもんた、みのもんた!ってお囃子風に番組が始まっていました)がMCをやっていたと思いますが、毎週欠かさず聴いてノートにランキングを全部書いていました。何年か書き連ねていましたね。そのノートはどこかにいってしまいましたが、その頃は新曲ばかりを追っかけていました。1972年に1位に輝いたA Horse With No Name(America)なんかはその時代の代表曲でしょうか。
お金もそんなに自由にならない頃ですから、もっぱらエアチェック(ラジオ放送の曲を録音)をして好きな曲を何度も聴いていました。好みの曲の中からどんなレコードを買うかは大問題で、限られた原資を何に使うか、かなり真剣に考えてLP盤(アルバムで15曲くらい入っていてお得)を選んだことを思い出します。今やネットで1曲単位で買えるので、アルバム作品と呼ばれるものは出なくなりました。何か1曲1曲が使い捨てみたいな感じで、作者側もやりにくい時代でしょうね。おまけにデジタル化が進み、Copy Protectionといっても、多くの人がCD借りて録音したり、ネットでもかなり自由に楽曲を自分のメモリーにDLできてしまいます。Cloudの時代になり、自分の好きなものを手元に置く必要もだんだんなくなり、「俺、2000枚もレコードあるんだぜ~」みたいな自慢も今や高齢者限定の悦の領域に入ってきたような感があります。
高校に入ってプログレッシブロックが流行り、まずPink Floydには嵌りました。「狂気~The Dark Side of The Moon」は何度も何度も聴きました。途中で針を上げることなんて出来ない程の世界観を持ったアルバムに衝撃を受けました。そこからKing Crimsonに時代を遡ると同時に、ロジャー・ウォーターズ、デヴィッド・ギルモア、レコーディング・エンジニアのアラン・パーソンズなどへと興味が深化していきました。その後、EL&Pなどに興味が広がり、Genesisで私的頂点を迎えます。GenesisのAlbumはほぼ全部買い集めて聴きまくりました。若い時分の溢れるエネルギーのかなりの部分をこういったMusician達が吸い取ってくれたように感じます。フィル・コリンズは天才!ってその頃思っていました。Beatlesも遡って色々聴きました。ジョン・レノンやポール・マッカートニーも類稀なる才能の持ち主ですし、ポールは間違いなくヒットメーカーです。ヒット・メーカーではElton Johnも欠かせませんし、QueenのBohemian Rhapsodyは間違いなく衝撃を受けた1曲です。アカペラ・バラード・オペラ・ハードロックと続くこれまでにない構成、4オクターブのフレディ・マーキュリーの美声。無謀にもカラオケで何回かチャレンジしたことがありました。大学時代にはJazzやFusion系に傾倒しました。
社会人になってからはカラオケボックスの普及により、歌いやすい、そして流行りのヒット歌謡曲を追いかけていましたね。楽器のできない私としては「聴く」から「歌う」と能動的になっていった時代と言えます。喉も立派な楽器のひとつですしね。アメリカに赴任して都合11年半滞米していましたが、洋楽はあまり聞くことはなく、日本の歌が恋しくなって、出張返りに必ず3枚くらい成田空港でCDを買い求めました。日本から曲テープも送ってもらったりもしました。仕事以外で英語が聞きたくなかったのかもしれませんね。この頃は久保田利伸に嵌って、これもほとんどのCDを買い集めました。山下達郎もこの頃全盛でしたね(もちろん今でも竹内まりあと仲良く活躍していますが)。
昔テープに録り溜めた曲をアナログ~デジタル変換して、数年前に全てPCに取り込みました。その時に曲名や歌手がわからないものをTrackIDで曲名・アーティスト名検索を行うことができたので、随分曲整理に助かりました。でも邦楽の古いものはなかなか検索できず、まだ数十曲不明のままです。今はPCに4000曲近く入っていますが、ずっと流しっぱなしにしても12日以上掛かる量になっていて、これから死ぬまで一回も聴かないであろう曲が結構あるように思います(ごめん!)。
<あまりMajorでないお気に入りの宣伝:Bobby Caldwell、Conrad Iveteky、Gipsy Kings、Gino Vannelli、Johnathan Butler、そして最近嵌ったのが角松敏生。ASKAにも再起してほしい!>
レコード、カセットテープ、8トラック、CD、そしてmp3などの様々な音声ファイルフォーマットと技術の進歩を改めて振り返って見てみると、特にアナログからデジタルに変わっていった過程で楽曲の価値が下がっていっているのがとても残念です。Creatorがその創造性を発揮できるような環境を作ることもファンの大事な活動ですね。今後もネットの進展でさらに楽曲そのものがFreeに配布されていくことでしょう。Musicianはどうやって生計を立てていくのか、もちろん地道に曲作りをしていくことは価値がありますが、商業的にはやはりコンサートに人を呼べるかどうかにかかっていると思います。ここでも変化に対応してライブな価値を生み続けられるかどうかが問われていますね。サザンオールスターズは私のちょっと先輩ですが、今でもファンの皆さんが新曲やライブを渇望する数少ないアーティストのひとつで尊敬に値します。昔の曲も古さを感じさせませんからスタンダードになること間違いなしですね。
山内惠介さんという31歳の演歌歌手は苦労の末、今やご婦人に絶大な人気を得て、日本中をイベントで飛び回っているようです。はとバス5台仕立ててファンと2泊3日の旅行にはファンの皆さん目いっぱいオシャレをして目を輝かせて参加なさっていました。ここでもTV越しではないライブ感が横溢しています。
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