ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱したというCSVという言葉が目に留まりましたので、考え方を勉強してみました。
基本的には社会問題の解決にビジネスの手法を持ち込んで解決していこうという考え方です。世の中には環境問題、貧困問題、障がい者雇用、住宅問題、健康問題など課題が沢山ありますが、一般にこれら社会問題は政府や自治体がやることで企業は関係ない(企業は税金を払っていますから、それらで賄ってくださいという考えが一般的でしょう)とされています。勿論主に大企業ではCSR活動を通じて良い評価を受け、良い市民を生み、害悪を減少させ、ステークスホルダーと良い関係を結ぶといった活動も行っています。社会問題解決の為に様々なNGO、NPO、ソーシャルビジネスも活動していますが、ポーター教授によれば、それらの活動は大規模に展開する技能や資源に乏しく、小規模の人を助けることはできても何億人もの人を助けることができないと論じています。
企業は利益をあげる力があるから社会問題を解決できるのであって、社会問題対策と利益創出は相反するものだと考えることは企業が多くのビジネスチャンスを逃しているとポーター教授は指摘しています。多くの企業がステークスホルダー間の利害関係のバランスを取らなければならない状況であったり、たとえば経済的な成功と環境的な成功はトレードオフ関係だと考えたりすることは危険な考え方だともしています。
日本は敗戦後、少なくない企業がCSVの考え方を持っていて、日本の再建の過程で多くの起業家・経営者が資本主義を通じて国家再建をしようと企業活動を行っていました。昨今の例をとれば震災が起きたら何ができるかと企業に問うと、寄付をしますとか、ボランティア社員を現地に派遣しますなどの答えが返ってきますが、社会変革のためには寄付からビジネスへの思考の変化が必要だとポーター教授は説いています。
たとえば住宅問題を例にとれば、寄付金に頼った財団から安価の住宅を提供するより、安価な家を建てる力を持つ企業のビジネスモデルを創造することができれば規模がさらに拡大し、問題解決にパワフルに寄与できて、社会的価値を増すことができるのです。
現代の若者たちは育ってきた時代背景から社会問題に関心が高く、多くの人が医療、環境、低所得、貧困といった社会的課題にNGOなどに参加して情熱をもって取り組んでいる人が少なくありません。その意識やその気持ちは素晴らしいもののその効果は限定的小規模で、根本的問題解決にはなりません。やはり構造問題に取り組まないと多くの人を助けることはできないわけです。
我々はどうやらモノの見方が狭くなってしまって、本来の企業の存在意義、あるいは企業が提供する社会的な価値、収益をあげることによってどのような社会的価値をもたらすことができるのか忘れてしまったようです。企業が持っている資源や専門性を使って社会問題を解決する、そして利益をあげて、社会的価値を増大させる、これがCSVの考え方の基本と理解しました。
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