東電株主総会

代々木第一体育館で物々しい警備下、東電の株主総会が今日行われました。入場株主は荷物検査を課され(とは言っても空港の出国検査程ではありません)ての入場です。入り口前には多くの市民団体と思われる方々が各々の株主提案に賛同してもらおうとビラを配っていました。会場に入って東電役員の顔が見えるところでと思い、前の方に進むと「提案株主席」に気づかずに座りそうになり、その一列後方の真ん中に着席しました。三々五々集まる「提案株主」の皆さんは顔見知りのようで、それぞれ挨拶を交わしています。総会開始前段はお決まりの進行でしたが、時折経営側への怒号が飛び交うだけでなく、株主間で怒号が飛び交っています。原発反対派、古い原発の廃炉推進派、原発再稼働派あるいは東電関係株主、一般株主となかなか単純に色分けできない複雑なStake Holderの面々です。

既に夕刊で報じられていますが、結果は全て株主提案は否決され、経営側の意向に沿った決議となりました。The資本主義の結果と言ってしまえば当然ですが、一方で何か無力感のようなものも感じます。先般の都議選の投票率は低かったですが、行かなくても結果は変わらないという多くの方々と同じ脱力感を想起させました。

経営者側で壇上に登っていた方々は60~70名いたでしょうか。最前列の23名は会長以下全員男性でした。最後方の左隅に一名の女性を確認しましたが、その方は株主数と有効株個数を説明するためにいた方です。一方対照的に、株主提案の趣旨説明に立った10数名のうちの9割近くは女性でした。技術的な独自提案を説明されたEngineerと思しき男性もいらっしゃいましたが、女性が圧倒的に多かったです。私に質問の機会を頂戴できたとすれば、役員に3割くらいは(5割でもいいのですが)女性を入れたらどうかと提案したでしょう。それくらいまるで男性理論対女性理論のように見えた対立構図です。

質疑は途中で打ち切られ3時間半ほどの株主総会は主催者側の思惑通り(想定の範囲内で)終了しました。沢山の質疑応答がされましたが、公平に見てまともに回答した役員は非常に少なかったと言わざるを得ませんでした。質問論点の急所をかいくぐり想定問答集に沿った回答は少なくとも誠意を感じられるものではありませんでした。3.11以降にその職に当たられた経営陣にしてみれば火中の栗を拾ったのに、何故ここまで過去の経営者の無為無策の責任を背負わせられるのかと思っていたかもしれません。何とか切り抜けて無事総会を終わりたいという気持ち、それが明らかに表れていました。一般株主もそれを十分わかっています。国策で進められた原発の大事故。炉心融解、放射能漏れ、冷却水処理、放射能がれき、作業者の被曝、被災者への対応と後処理だけでも大変です。東電だけでは無理です。原因と責任を明確にした上で、東電で責任の持てる範囲に限定して株式会社の責務を果たしてもらいたいです。東電を矢面に立てて国の責任をうやむやにするのはやめてほしい。新規原発についてはしっかり時間を掛けて安全性を高めていくべきです。成長戦略/金になるからと焦って海外に売り歩くのはどんなもんでしょう。各国の大統領や首相が経営者団体を引き連れて官民商談しています。全部を否定するものではありませんが、やはり金より大事なものがあるはずです。

質疑に立ったひとりの女性の話に目頭が熱くなりました。質問既定時間の3分間一生懸命訴えていました。3人の子育てをされて、現在は介護の仕事に就いている方です。原発の近隣に住まわれていた方で20数年前から東電に「原発は本当に大丈夫なのですか」と問いかけていたそうです。その度に東電は「飛行機が落ちても、地震が起きても大丈夫」と所謂『安全神話』を語っていたそうです。証券会社からは「東電は大丈夫」と言われ、主人には反対されたけれども当時40数万円の東電の株を買いましたと。今日は会社を休んで初めて総会に来ましたと、こんな普通のおばさんをここに来させるほどの状況になっているにもかかわらず(経営者の皆さんは立場上本心を言えないこともあるでしょうと理解を示しつつ)、これまでの話は結局お金の話ばかりじゃないですか。私は命の話をしているんです」と時折笑いも誘いながら、しかし毅然と言い放ちました。

安倍首相は2020年までに、指導的地位に女性が占める割合を30%以上にすると述べられましたが、それでは遅いです。選挙でも「景気の問題」が一番の争点となることが多いですが、それは表層の問題であって今世界で抱えている問題の根っこの多くは実はお金の問題ではなく倫理の話なのです。特に高度成長期を終えて安定成長期に入った社会では、それを構成する人々の割合と全く異なる構成人員で社会(あるいは会社)を運営することの危うさを認識しなくてはならないと思います。なるべく多くの人が社会参画できるように皆選挙でも一票を投じて欲しいです。まだまだ日本は多様性とは程遠い状況で、これらを放置しておけば日本の国際的地位はさらに低下していくこと必至です。

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