日本の領域は世界12位

日本の国土面積は37万㎢で世界201国中61位。ロシア、アメリカ、中国などの大国と比較すれば数十分の一と小国であることは間違いないが、上位3分の1に入っているという観点で見れば、多くの日本国民が思っているほど小島国ではない。イギリスの1.5倍、ドイツよりもやや大きめの国土を有している。昨今、海洋資源の重要性が指摘されているが、日本の排他的経済水域(Exclusive Economic Zone; 略称EEZ~いわゆる200海里~沿岸から370kmまでは主権が及ぶ)は非常に広く、アメリカ・オーストラリア・インドネシア・ニュージランド・カナダについで世界6位という海洋国家である。このEEZと国土を合わせた領域では、なんと日本は世界12位の領域を有する国家に躍り出るのである。EEZの比較で言えば、日本の448万㎢に対し、中国のそれは229万㎢と半分しかない。最近の中国の海洋進出は軍事上の観点のみならず、EEZを広げようとする経済行為の一環とも言える。

海洋資源には様々なものがある。日本近辺の海底に眠っている資源では、金・銀・銅・亜鉛・鉛・石油・コバルト リッチ クラスト・メタンハイドレート等の豊富なエネルギー資源や鉱物資源の存在が近年における技術の発展と調査によって確認されている。種々の制約要因(法規制、土地用途、利用技術など)を考慮しない場合に理論的に取り出すことができるエネルギー資源量を「賦存量(ふぞんりょう)」というのだそうだが、300兆円の価値があると算定されている。実際には経済的に見ても実利用できるかどうかは研究開発次第であるが、文科省・経産省・海洋エネルギー資源開発促進日本海連合・JOGMECなどがその調査及び採掘研究にあたっている。

EEZを語るにあたっては各国が抱える領土問題は避けることのできない課題である。皆さんご承知のように、日本ではロシアとの間で北方四島、韓国との間で竹島、中国・台湾との間での尖閣諸島が代表的なものである。ことEEZの話になると沖ノ鳥島が国連海洋法条約において、どのような位置付けになるかが大きな問題になっている。
沖ノ鳥島は東京都小笠原村に属する小笠原諸島最南端の「島」であるというのが日本の見解である。日本は2008年に大陸棚限界委員会に対して、それを根拠に大陸棚の延長申請を行ったが、中国と韓国が異議を唱え(アメリカとパラオは異議を唱えず)、今もって継続審議の状態となっている。

中国と韓国の主張は「沖ノ鳥島は島ではなく、岩である」というもので、ただの岩と認定されればEEZは認められない。EEZを主張するには国連海洋法条約の第121条 第1項「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう」あるいは第121条 第3項「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」のいずれかをクリアしなければならない。また第60条 第8項「人工島、施設及び構築物は、島の地位を有しない。これらのものは、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、領海、排他的経済水域又は大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない」とあり、日本は沖ノ鳥島を何とか「島」あるいは「営みのある岩」として位置付けるべく様々な対策を講じている。

沖ノ鳥島は外観で見ると、東西に4.5km・南北に1.7km・面積5.78㎢のそれ相応の大きさの島だが、その実態は北小島と東小島というそれぞれキングサイズベッド程度の岩礁に、以下に述べる対策を講じてその存在を保っている(歴史を辿れば、1933年には6つの露岩が満潮時にも姿を現していたという記録があるが、その後の風化や海食により4つは亡失してしまった)。1987年消波堤設置、2006年サンゴ増養殖技術検討開始、2007年灯台設置運用開始、2013年港湾施設建設開始・2016年完成予定。工事だけでも数百億円の国家予算が投じられている。

沖ノ鳥島の大陸棚延長が認められなければ、日本は37万㎢の国土以上の海域を失うことになり、その経済的損失は膨大である。一方で、中国は南沙諸島でジョンソン南礁(赤瓜礁)で日本と同様なことを行っている。2012年には岩礁の埋め立てを行い、2014年には護岸や桟橋、宿舎などの人口建造物を建造し、2015年には灯台の完成式典を行った。中国との領有権争いをしているベトナムによれば、ジョンソン南礁は満潮時に海中に沈むとしており、地球温暖化による海面上昇はこのようなところにも大きな影響を及ぼしている。また、軍事に絡めて言えば、核と言わず小型爆弾でもこの岩礁を爆破してしまえば、対象国に重大な経済的打撃を与えることができる些少の存在であるとも言えるのである。

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