経済産業省のHPを見ると、「2020年7月1日よりレジ袋有料化がスタートします。プラスチックは、非常に便利な素材です。成形しやすく、軽くて丈夫で密閉性も高いため、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献しています。一方で、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。私たちは、プラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があります。」「このような状況を踏まえ、令和2年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うこととなりました。これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。」とある。プラスチックの有用性について言及したあとに、プラスチック生成及び廃棄に際して課題があることを指摘し、ライフスタイルを見直すきっかけを目的にしていると結んでいる。
NHKの国際報道によると、いち早く有料化に踏みきったのが中国で、12年前の2008年から取り組みを始めているという(別の記事で2006年ルワンダでレジ袋原則禁止を発見、タンザニアやケニアにも拡大)。
中国におけるレジ袋有料化のきっかけは、レジ袋のポイ捨てが深刻化したことであると伝えている。中国では2000年代から、路上に捨てられたレジ袋が「白色汚染」と呼ばれて問題となり、中国政府は2008年から厚さ0.025㎜以下のレジ袋の生産や使用を禁止するとともに、それ以上の厚さのレジ袋については、店側が料金を徴収するよう義務づけた。
しかし、レジ袋有料化から10年余りが経ち、この制度がうまく機能していないとの指摘が出ている。「レジ袋有料」の表示を掲げている店でレジ袋について店員に聞いてみると、こんな答えが当たり前のように返ってくるという。「お金はいらないよ」「1枚目はサービスだよ」、商店の多くが、レジ袋を無料で提供しているのが実情のようである。某環境団体の調査によると、レジ袋代を徴収していたのは、1,000店中17%にとどまっているという。取り締まりの厳しい大手は別にしても、他店に客を奪われないよう中小の店は牽制しあってレジ袋を無料提供している実態が明らかになった。
一方の買い物客はどうかと言えば、レジ袋にお金を支払うことに「そんなに気にしません」「袋を持っていなければ買うし、それがいくらかなんて気にしません」というのが大方の意見。先の環境団体はレジ袋の価格をもっと高くする必要性を訴えている。
タイは2020年1月からレジ袋の無料配布をやめる取り組みを始めた。「マイバッグ」がようやく定着し始めてきたところで、新型コロナウイルスが発生。感染を防ごうとして、料理の配達やテイクアウトのサービスを利用する人が増えた結果、多くのプラスチック容器や袋が使われ、プラスチックごみも増える傾向にあるという。
こうした中、タイでは、政府と企業がリサイクルのプロジェクトに乗り出している。デパートなどにプラスチックの回収箱を設置。将来的には、回収したプラスチックを細かい粒状に加工して製品化し、リサイクルを定着させたいとしている。ワラウット天然資源・環境相は「大事なのは国民の決意です。もう少しの努力で適切なりサイクルの仕組みができます」とプラスチックごみ問題への取り組みに意欲を示している。
私自身の行いはどうかと言えば、これまでスーパーなどで無料でもらっていたプラスチックバッグをいくつか持ち歩くようにはしている。ビジネスバッグにもエコバッグを入れている。しかし、元来何も持ち歩きたくない性分なので、急に思い立った買い物には有料でレジ袋をもらうこともある。冒頭の「それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」という趣旨からすれば、レジ袋有料前からある一定の環境問題に関する意識は持ち合わせていたし、入手したレジ袋を保管しておいて生ゴミ袋に使ったりリユースをしている。もし、保管していたレジ袋が無くなってしまえば、有料でプラスチックごみ袋を買うことになるだろう。
循環型社会を作るには5Rがキーワードであると言われる。Reduce(リデュース)ゴミを減らす、Reuse(リユース)再利用する、Recycle(リサイクル)の3Rに、不要なものは買わないRefuse(リフューズ)、修理して長く使い続けるRepair(リペア)の2つを加えた概念である。レジ袋有料化はRefuseにあたるものと思われる。地球環境を考えたとき、不要なものはタダでももらわない。もらっても、すぐにゴミ箱にいくのであれば、マイバッグを持ち歩いて、レジ袋は極力買わないようにしましょうということであろう。その趣旨に反論はない。しかし、循環型社会を作るためには、それ以外の4Rも含めたエコシステム全体の中で論じるべきであろう。これまでレジ袋は使用量削減のための薄型化に様々な企業が挑戦してきた経緯もあるし、特に濡れたもの・冷蔵品・冷凍品などはレジ袋は重宝で、紙袋よりは再利用率が高いのではないだろうか。再資源化に関してはなかなか難しい事情があるようだ。レジ袋の口が結んであると機械では破袋できない、半透明のレジ袋は中が見えにくく、ごみと資源物が混入して捨てられやすい、生ごみの水切りが徹底されないので焼却工場の燃料効率を低下させる等、レジ袋リサイクルの問題点が多々挙げられる。さらに軽いので飛散しやすく自然状態では分解されない、行楽地などでポイ捨てされやすいといったことから、野生動物が誤飲して苦しみ死ぬ、あるいは海中などでマイクロプラスチック化し、食物連鎖の中で最終的には人間の体内に蓄積するといった健康被害も懸念されている。
リサイクルの関してはStatistaによる2013年OECD加盟国での調査結果がある。ドイツが65%でトップ、ついで韓国が続いている。日本は下から3番目の19%。かくのごとく環境後進国の汚名をいただいているように、取り組むスピードにしても、取り組む姿勢にしても遅れを取っているのは否めない。ここまで遅れたのであれば、ドイツや韓国といった環境先進国の背中をただ単に追うのではなく、日本らしい取り組みを進め、世界にアピールすべきではないか。「新」生分解性プラスチックの開発(現状では埋めると温室効果ガスであるメタンを発生)であるとか、使用量削減のみならず、ごみ回収の方で生態系に悪影響を与えない、もったいない文化の復権、サッカー会場で見られる自主的な清掃や海岸美化、清潔好きの日本国民であれば、廃棄しずらい環境を作ることも得意ではないか、企業教育や教育現場での環境意識徹底など、やれることはいくらでもあると思う。ただ、レジ袋を有料化しました、全プラスチック使用量の2%にあたるレジ袋を2割削減が目標です等といった矮小化された領域で国民の納得感を得られないまま、時たま国民に使用削減を漫然と訴えるような政策では結果は期待できない。エコシステム全体を睨んで生産から廃棄・分解までの過程でどういったKGI・KPIを設定して国民を誘導していくか政治家や官僚の手腕が問われるところである。冒頭の経済産業省HPでの訴えの前段は理解できるとして、後段は過剰な使用にのみフォーカスをしている。廃棄の部分にも同様の啓発活動が必要なのではないだろうか。100均ではレジ袋やポリ袋が売り切れ状態。スーパーではマイバッグによる万引きが増加しているとの報道。レジ袋有料化はどこかバランスを欠いている政策で、のちに世紀の愚策と揶揄されかねない片肺飛行の政策です。進次郎さん、今こそ腕の見せ所です。
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